第15話
☆☆☆
突然、私は私に戻った。目の前には猫のヴェリルがいる。
何、今の……?
私はリリアナになっていた。リリアナとして、彼女とユアンのことを見て感じていた。
『夢じゃないよ。僕が君とリリアナをシンクロさせたんだ。君がリリアナとして見たのは、感じたことは、本当のこと』
雨に濡れて呆然としていたユアン。マクシミリアンさんに助けられて、ここでの生活を手に入れた……。
『とりあえず、最初はこんなところかな。あまりいっぺんに知ろうとすると、頭がパンクしちゃうだろ?』
ヴェリルはしなやかに動き、大人の足元をするりと抜けて行った。
「お?」
店長さんが驚いたように目で追ったけれど、いたずらをしたわけではないし、猫はすぐに行ってしまったので、慌てるようなことはなかった。
私は少し落ち着いてから、やっぱり気になって、ヴェリルを追いかけた。
白い猫は中央公園へと向かっているようだ。ヴェリルは、やっぱりあの公園に住みついているのかな。そんなことをぼんやりと思った。
「リゼル!」
公園の入口手前で、ユアンが歩いてくるのが見えた。
「こんにちは。もしかして、店に行ったのかな?」
「うん。ユアンは今日はお休みだって聞いたわ」
「ちょっと散歩してたんだ。僕はまだこのへんに詳しくないから」
クチナシが咲きはじめたころって、まだ二週間前くらい? 私たちがはじめて会ったのは、それからだ。
「ユアンは、六月になってからガルデニアへきたの? その前はどこにいたの?」
思わず聞いてしまったけれど、彼は表情を険しくした。
「……店長に聞いたの?」
私は首を横に振り、こんなことを言ってもいいのかわからないけれど、とりあえず話してみた。
「リリアナとシンクロしたの。リリアナが知っていることを、リリアナに教えてもらったのよ。ユアンは雨の日にこのガルデニアへきて、記憶を失って、マクシミリアンさんに助けてもらったんでしょ?」
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