6 シンクロ
第13話
6 シンクロ
「わあ~。ステキなお店ね。とても好みだわ」
ルチルさんは『虹色の羽』の斜め前から、じっくりと外観をながめてそう言った。
白いレンガに蔦のからまった壁が、私もとても好みだ。
猫のヴェリルは植木鉢の間をひょいひょいと進んで行き、建物の奥のほうへ行ってしまった。
まあ、猫だから、お店には入れないしね。
ドアが開いて、マクシミリアンさんが出てきた。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりましたよ」
それはルチルさんに向けた言葉だ。私はルチルさんのことは話していないのだけど……。
店長さんが最初に招待状を渡したのが、ルチルさんだからかな?
二人は、どこか似た雰囲気だった。ああ、そうか。ルチルさんもここの雰囲気に合うんだ。
不思議な能力を持った人と、不思議なお店。
店長さんも、何か不思議な力がありそうな感じがした。
「リゼルさん、ユアンはお休みで、出かけてるんですよ。もう少ししたら、帰ってくるとは思うのですが」
「ユアンは、ここの二階に住んでるんですか?」
「え? ええ……」
私はなぜだか知っていた。ユアンがどこか遠くからきて、記憶をなくしているということが、本当のことなのだとわかる。
これはなんなのだろう。これが、私が天使に選ばれたということなのかしら。
天使って誰なの? 誰かが、私に何かを伝えようとしているの?
「可愛い天使の置物ね。私、天使が大好きなの。リゼルは何が好き?」
ルチルさんが手のひらに乗るくらいの、陶器の置物を見ている。
「私は妖精が好き」
天使も好きよ。そう続けようとして、はっとした。天使はユアンなのでは……? だって、彼は天使の名前を持っている。
『はずれ。彼は人間だよ』
いつのまにか、ヴェリルが足元にいた。猫が店内に入っちゃ、まずいでしょ! 私はヴェリルを抱きかかえようと、しゃがみこみーー。
(えっーー)
床がぐにゃりとした。倒れるーー!
身体が浮いたかと思うと、私は動けなくなっていた。
『君が自力ですべてを知るのは難しいだろう。普通の女の子だからね。だから、手助けしてあげる。自分で見るんだよ』
さっき、ただの女の子ではないって言わなかった?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます