5 ガルデニアの精霊
第11話
5 ガルデニアの精霊
学校帰りの午後、中央公園でルチルさんとヴェリルを探した。
この間のベンチには他の人が座っていたので、その近くを探したけれど、ふたりの姿は見えなかった。
「今日はきてないのかな……」
話したいことがたくさんあるのに。
中央公園は広いので、見つけるのはちょっと大変だ。
諦めきれずに歩きまわっていると、見たことのあるような男の子が近づいてきた。
白っぽい髪の毛、金色の目……夢に出てきた子だ。
まさか……という思いもあったけど、彼の後ろからルチルさんが歩いてきたので、やっぱりそうなんだ! と思った。
「ル……ルチルさん……。ヴェリル……」
「え?」と、ルチルさんはきょろきよろしだした。目の前にいる男の子がヴェリルだとは、気づいてないの?
人間の姿をしたヴェリルは面白そうに笑うと、私の隣に立って、私と同じようにルチルさんと向き合った。
「どこかにヴェリルがいた?」
ルチルさんは、ここに、目の前にヴェリルがいるとは思わないみたいだ。猫の姿ではないから?
『彼女に僕の姿は見えないよ。見せてないからね』
頭の中に直接語りかけてくるような声は、夢の中で聞いた声と同じだった。
あの夢って? 夢ではなかったの? それとも、私の夢の中に入ってきたってこと?
私は声も出せずに男の子を見つめた。その様子が変だと思ったのか、ルチルさんは目を細めるようにして、ヴェリルのいるあたりを見る。
「そこにいるのね。ヴェリル? ヴェリルでしょ?」
「ルチルさん、本当に見えないの?」
「……てことは、リゼルには見えるのね。やっぱり目がいいのね。もう! 気配はするから、探しまわっていたのに!」
「え? ヴェリルは、ルチルさんの猫じゃないの?」
「違うのよ」と言いながら、ルチルさんは人のいないベンチを指して、私たちはそこへと移動した。
「猫のヴェリルとは、この公園で会ったの。毛並みの色もそうだけど、金色の目といい、どこか普通の猫とは違う気がして、観察していたのよね。そうしたら、語りかけてきたのよ」
ルチルさんが言うには、ヴェリルはこの都市を見守っている霊的な存在なのだとか。
「守護霊ってこと?」
「天使とも言えるし、精霊とも言えるし、あらゆる不思議なのよ」
私は納得した。だったら、姿を変えることだってできるし、私の夢の中に出てくることだってできるだろうから。
ただ、わからないのは、ルチルさんには人の姿を見せていないのに、どうして私には見せてくれるのか。
男の子のヴェリルは、ルチルさんのまわりを行ったりきたりしている。
「ちょっと! 何してるのよ?」
ルチルさんは気配は感じるようだけど、やっぱり見えないみたいだ。
「でも、声は聞こえるんでしょ?」
「う~ん。普通にこうやって会話をするわけではないの。感じるっていうか。……私の妄想だと思われても、しかたないんだけど」
「ううん! わかるわ!」
ヴェリルはくすっと笑った。
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