第10話

(私は、夢でこの子になるほど、この子が気に入ったの?)


確かに綺麗だ。可愛い。


(でも、あれは夢だったのかな? ユアンと店長さんの会話が意味深で、本当にここで見て聞いていたような気がする)


「その子がリリアナ?」


いつのまにか、ママが私のそばへきて、人形をのぞきこんでいた。


「綺麗なお人形ね」


「そうでしょ?」


「でも、高そうね」


リリアナがいくらかはわからなかった。そもそも、この子は本当に売り物なのだろうか。


店長さんがママに小声で何かを言っている。きっと、リリアナの値段だろう。


ユアンは、心配そうにしていた。定まらない視線が、リリアナの今後を気にしているようだ。


胸の中がもやもやした。


「私、どうしてもこの子がほしいわ。ママ、買ってくれる?」


「そうねえ……ちょっと高いけど……きっとパパもだめとは言わないと思うわ」


ユアンはじっとこっちを見ていた。私ではなく、リリアナのことを。

それはいやだ。この子ではなく、私を気にしてほしい。


「ーーでも、今すぐでなくてもいいの。クリスマスプレゼントに買ってくれる? だから、それまで予約っていう形にしてもらいたいんだけど……」


私は店長さんを見上げた。すぐに「よろしいですよ」と言ってもらえたので、今度はユアンを見上げた。


「クリスマスまで、リリアナのお世話をお願いしますね」


ユアンは作り笑いなのか、穏やかに微笑んで、こくりとうなずいた。


「かしこまりました。お任せください。クリスマスまではまだ間がありますが、リリアナに会いにここへきてくださいね」


「会いにくるわ!」


リリアナと、あなたに会いに!

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