4 クリスマスプレゼントの予約
第9話
4 クリスマスプレゼントの予約
私はママと一緒に、雑貨店『虹色の羽』に行ってみた。
ドアの前で、店長さんがお客様を見送っているのが見えた。私たちに気づくと、軽くお辞儀をして、そのまま待っていてくれた。
「こんにちは」
「こんにちは、リゼルさん。リリアナのおねだりに成功しましたか?」
店長さんとママは自己紹介をしあった。お天気の話なんかも出たところで、長くなりそうだなと、私は先に店内へと進んだ。
ユアンは私に気づくと、にこやかに、まっすぐに歩いてきた。
「リゼル。思い出したことがあるんだ。僕は一週間ほど前にーー」
「思い出してくれたの!? 嬉しい!」
私は飛びつくような勢いで、彼の腕に手をかけた。
「あ、ごめんなさい」
ユアンは「いや……」と、少し照れたように笑った。
「君は最初から、僕に気づいていてくれたんだね」
「そうよ。忘れるわけないわ! 命の恩人だもの!」
「恩人て……大袈裟だよ」
ううん。ちっとも大袈裟なんかじゃないわ。ママに話したら、ぜひお礼を言いたいって。それでさっそくきたんだもの。
まあ、ママは綺麗なレースに心を持っていかれちゃったようだけどね。
「ママときたんだね。……リリアナを買いに?」
ユアンの顔が曇ったのを、私は見逃さなかった。
彼にこんな表情をさせたくない。
私がリリアナを買ってもらったら、彼はどうするかしら?
諦める? それとも、執着する? リリアナを? 私を?
ーー彼との接点がほしいなら、リリアナをーー。
ヴェリルの声が聞こえた。悪魔にそそのかされたような気がした。
私が口を開く前にママがやってきて、ユアンにあいさつしだした。
「まあ、あなたがユアンさんね。先日は娘を助けていただいてーー」
一週間前のことを、二人は話し合っている。
私はリリアナのところへ行き、そっと両手で持ち上げた。
リリアナのドレスが広がるようにして、下へさがる。銀色の巻き毛やエメラルドの瞳はそのまま動かなかった。
重いわけではなく、軽いわけでもない。人形としての彼女がここにいるだけ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます