第8話

まわりが真っ暗になり、店長さんもユアンも消えた。


「君にはまだ、加減が難しい」


水の中から引っ張り上げられるような感覚。目の前に、私より少し年下かな? というくらいの、男の子が現れた。


「魅力的なのはわかるけどね。帰ってこられなくなるよ」


白い髪……ううん、水色? 人懐こそうな笑顔を浮かべているけれど、金色に輝く目は、本当には笑っていないように見えた。


(誰?)


「僕の名前なら、君はもう知っているよ。会うのも、これが二度目だ。ほら、思い出して。中央公園で、会っただろ?」


目がいいのね、と言っていたルチルさん。その隣にいた、綺麗な毛並みの猫。

中央公園でのことを思い出して、私は私の姿に戻り、小さく呼んでみた。


「ヴェリル……?」


「よくできました」


男の子の姿をしたヴェリルは、今度は本当の笑顔を見せて、「また今度ね」と言って、手を振った。




☆☆☆




目覚めたときに、なんだかとても疲れていると感じた。夢のせい?


ーー夢……だったの……?


あの男の子って、あのときの男の子……?

砂粒のようなローズクォーツを「預かっていて」と言った男の子。


ーー違うよね。あの人は、私よりは大人だった。


「あのローズクォーツって、どうしたんだっけ……?」

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