3 夢か魔法か?

第7話

3 夢か魔法か?



ユアンさんは、私のことを覚えていなかった……。


一週間前の誕生日に、危ないところを助けてくれたのは彼だったのに。


でも、今日知り合えたということは、やっぱり一生の出会いになるのではないかしら?


今日感じた謎の一秒。あれが魔法なのだとしたら、もしかして、危ない目に合ったあの一瞬も、魔法の一秒だったのかも。


魔法は魔法を呼ぶ。物語の始まりはいつもそうだ。これをただの偶然にしないために、私ができることはーー。



ユアンさんと、親しくなる!



そのためには、『虹色の羽』に通いつめなきゃ。

お客様になるには、やっぱりママに一緒に行ってもらおう。


常連のお客さんになるために……。彼に助けてもらったことも伝えなきゃ……。


興奮していたけれど、私はいつしか眠ってしまった。




☆☆☆




薄暗い店内の、そこだけに光が当たっていた。

緑のビロードのドレスを着た、美しいお人形。リリアナという名前の、銀色の巻き毛のお人形。


リリアナはアンティークドールというよりも、もっと今風というか……、こういう女の子って、本当にいるよね! という感じの、リアルで綺麗なお人形だった。


リリアナはじっと私を見ている。エメラルドのようなキラキラとした大きな瞳で、夢見るような表情で、こっちを見ている。


ああ、これは夢なんだ。あのお人形があまりにも美しくて、どうしても欲しくなり、こんな夢を見ているんだ。


……と、私は思った。


「ユアン、何か思い出した?」


マクシミリアンさんが、静かな声で尋ねた。


「……いえ。何も」


「その子のことは?」


私のことだ。ユアンは私をじっと見つめ、首を横に振った。


「リリアナと呼んだのは君だよ。彼女は、君が現れるまで、ここにはいなかった」


ユアンと一緒に現れたリリアナ。リリアナは人形なのだから、何も語らない。そしてユアンは……記憶をなくしていた。


(えーー? 何これ? 私、リリアナになっている)


今私はリリアナとして、ユアンの前にいた。人形になっているので、動けない。話せないけれど、感じることはできる。


リリアナはユアンをとても大事に思っていて、ユアンもーー。


リリアナはユアンのものなの?

一緒に現れたって、二人はどこからきたの?


『知りたい?』


頭の中に響いてくる、女の子の声。リリアナなの?


『知りたい? ユアンのことを、もっと知りたい?』


知りたいわ!


『それなら、こっちにきて』


こっちって、どこ?


『私に気持ちを、心を合わせてーー』


リリアナになっている私は、水の中をゆらゆらと漂っているかのような、不思議な心地よさを感じていた。これが気持ちを、心を合わせるということなのかしら?



ーーそっちに行ってはいけないよ。

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