2 『虹色の羽』
第5話
2 『虹色の羽』
雑貨店『虹色の羽』は、中央公園から駅へ向かう途中の、細い道を進んだところにあった。
大通りしか歩いたことのない私は、こんなところにこんなお店があることを知らなかった。
蔦のからまった白いレンガのお店。ドアのそばには、クチナシが咲いている。ほかにもアジサイやアガパンサスなどの、ブルーや紫のお花が綺麗。
大きなショーウインドウからは、中をのぞくことができた。装丁の綺麗な本、カラフルなボックス、ぬいぐるみやお人形が見える。
ショーウインドウにはアクセサリーや食器類が並んでいた。高そうだ。子ども一人では、入っていいのかわからない。
でも、せっかくきたのに。
ちょっと見るだけのつもりだったんだから、今度ママとこようかな。
でもでも、もしかしたら、今日、一生の出会いがあるのかもよ……?
私はぐるぐると考えて、ドアの前で行ったりきたりしていた。すると、ドアが開いて、中から背の高い男の人が出てきたのだ。
「いらっしゃいませ。どうぞ中へ」
チョコレート色の長い髪をそのまま背中に広げた、まだ若い男の人。メガネの奥の瞳はグレーにも紫にも見えて、その人の不思議な風貌に、私はかたまってしまった。
「大丈夫。怖くはありませんよ。招待状をお持ちのお客様には、お茶のサービスをしております。お菓子もおつけしていますので、どうぞ?」
この人が店主なのだろうか。私が持っているレースの封筒を指さして、片目をつぶって見せた。
「ユアン、お客様です。お茶をお願いしますね」
「はい、店長」
やっぱり、この人が店主のマクシミリアンさんだ。
ユアンと呼ばれた人もスラリと背の高い男の人で、やっぱり髪が長かった。彼は金髪を、首の後ろでリボンで結んでいる。その背中になぜかドキドキして、顔が見たいと思った。
さっき一言だけ聞いた声ーーあの声はーー。
彼はすぐに行ってしまったので、私はしかたなく店内に視線を移した。
アンティークな燭台、時計、ペーパーナイフなど、物語に出てくるような綺麗なものがたくさんある。
刺繍のレースは、ママが好きそう。やっぱり今度、ママと一緒にこよう。
そんなことを考えながらテーブルのまわりを歩いていて、私は吸い寄せられた。
銀の巻き毛のお人形。グリーンのビロードのドレスを着て、赤いバラのついたヘッドドレスをつけている。瞳はエメラルドだ。
「綺麗……」
そこから動けなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます