1 一週間おくれの誕生日プレゼント

第2話

1 一週間おくれの誕生日プレゼント



クチナシの甘い香りが漂っている。

六枚の白い花びらのこの花は、別名ガーデニアといい、この町ガルデニアの名前もこの花からきているという。


今の季節、ガルデニアはどこもクチナシが咲いていて、どこに行っても甘い香りが充満している。


中央公園はクチナシの花でいっぱい。噴水の近くの時計は、もうすぐ三時になろうとしていた。


今日のおやつは、成功しているはずの、ママの手作りショートケーキだ。


一週間前に誕生日を迎えてから、毎日ケーキを食べている。最初はお店のケーキを食べていたんだけど、ママが突然ケーキ作りにはまって、それからは毎日作るようになったのだ。


ショートケーキばかり、毎日!


……スポンジを失敗した……クリームを失敗した……って、まだ一度も成功していないの。

まあ、失敗と言っても、食べられるものなので、私がママと二人で美味しく食べているんだけどね。


成功したら、パパにも食べてもらうって。パパには、ちゃんとしたものを食べてもらいたいんだって。そんなママは、子どもの私から見ても、可愛いなあって思うんだ。


今日は土曜日。友達の家に遊びに行って、お昼もごちそうになってきたの。

ママのケーキが成功したあかつきには、私も友達をうちへ呼んで、ティーパーティーをするつもりでいる。そのときは、誕生日に買ってもらった花柄の陶器のティーセットを使うんだ。


そんなことを考えながら、私はもう一度公園の時計を見上げた。

二時五十七分。三時三分前。

ただ時間を見ただけなのに。



ーー時が止まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る