第3話

差し出された水筒の中のお茶を飲んで、リランジュはにっこりと笑った。


「ようこそ、旅の方。私はリランジュ・ラロ。ずっと……ずっとあなたを待っていたの」


「僕を? どうして?」


「いつか、ここに旅人が現れるって、知っていたの。誰かに教えてもらったわけじゃないけど、私にはわかっていたの」


「それが僕だと?」


「そうよ。花たちが喜んでいるわ。あなたは、妖精の王子様でしょ?」


彼は優しく目元を緩めると、ゆっくりと首を横に振った。


「僕は人間だ。こことは別の世界から来たことは事実だけど、妖精ではない。僕の名前はレヴィアス・エル・ファランだよ。レヴィと呼んで」


もう苦しくはないかと聞かれ、リランジュは呼吸が楽になっていることに気づいた。


「妖精じゃなければ、レヴィは魔法使い? さっき、何をしたの? あのお茶は何?」


矢継ぎ早に質問してくるリランジュを抱き上げ、レヴィアスは屋敷へと歩き出した。


「あまり興奮すると、また咳が出るよ」


「う、うん……」


お姫様のように横にして抱き上げられて、リランジュはすぐ近くでレヴィアスの顔を凝視した。


(綺麗……。絵本に出てくる、王子様か騎士のようだわ。レヴィを見たら、みんなびっくりしちゃうわね)


屋敷の玄関までは、色とりどりのライラックが並んでいる。花たちがみんな、この美しい旅人に好意を寄せていることが、リランジュにはよくわかった。

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