第13話 順風満帆
それからも、俺と関口さんはデートを重ねていった。
毎週の土曜か日曜には必ず出掛け、少し遠出して水族館やボウリング場にも行った。その度に軽く僕の訓練もして、肩を合わせたり僕自身の事で話をする等で関口さんに慣らしていった。
「おっ!宗二、あんた今週も出かけるの?」
お昼を過ぎて出掛ける直前、いつだったかの様に昼過ぎだというのに今起きてきた姉が聞いてきた。
そうだよと返すと、美里は「良いね〜青春だね〜」と繰り返し言ってニヤニヤ笑っていた。
「それで?どこ出掛けんの?」
「中間も近いし、今日は図書室で勉強」
それを聞いた姉は一気につまらなそうな顔をした。
「それもまぁ…青春か…」
「何を期待してたんだよ」
美里は「別に」と言って冷凍庫からアイスを取り出した。
「…どうせ勉強なら家に呼べばいいのに」
思考から溢れたように出た姉の言葉に俺は大きく動揺した。
「いやっ…!まだ付き合って一ヶ月だし!」
焦りからか少し大きな声で返してしまった俺を見て、美里は先程のニヤつきを取り戻したようだった。
「一ヶ月経ったんならさ〜、もう手とか繋いでんの?」
「…まだだよ」
そう返すと美里は、片手にビニールから出したアイスを持ち立ったまま、心の底から意外だという顔をした。
「うっそ〜…出会って数日で告白したってのに、そんなに進展遅いことってある…?」
実際には出会ったその日、顔を見た数秒で告白したわけだがそれは良いだろう。
「…高校生だったら普通じゃない?」
「イヤでも、こんな何回もデートしてるんだし…お昼とか放課後帰る時とかも一緒なんでしょ?」
関係性で言えば全然…と続ける姉を遮る形で俺は「行ってきます!」と言い家を出た。
手か…俺は、繋いでも良いのだろうか。
少し考えてはみたが駄目だろう。
関口さんは、俺を恋人ではなく協力者として見ている。彼女は俺の一目惚れという言葉を信じず、せめてもの協力の対価が訓練なのだろう。
もちろん、恋人として見せるために必要となれば彼女は僕と何の躊躇もなく手を繋いでくれるだろう。もしそれが手を繋ぐこと以上のことでも、彼女はするかもしれない。
だが、それの行動に深い意味は何一つ存在はしない。
この関係に、これ以上を求めること自体が間違いなんだとすら思えてくる。
毎週のようにデートが出来て、一週間のうち六日の昼食に一緒のものを食べる。
それが何よりの幸せなのだから。
待っていたバスが停留所に止まり、考えを止める。
我ながら、ひどく馬鹿なことを考えていたと思う。
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