第3話足固め

「カイ、お前は今から魔王になるのだ。その自覚はあるか?」


・・・自覚、ない。


いきなりの事すぎて、まだ頭が現実に追いついてない。


だって僕まだ言葉もうまく喋れないよ。それなのに魔王なんて。


「・・・ほぉ。お前さては、まだ言葉がうまく喋れないのか。・・・うーん。少し成長が遅いな。」


え?魔族ってそんな急成長するの?


「なぜだろうか。仕方ない、魔法をかけて、成長させよう。」


え?そんなことできるの?


先代の魔王は僕の頭の上に手を置いて力を込めた。


僕は、脳が回るような未知の感覚に襲われた。


先代の魔王が魔法をかけ、僕は10歳くらいの少年の姿になった。


「よし、これで大丈夫だ。お前ら、カイに、たくさん話しかけておけ。」


「かしこまりました!」


「我は少し出かける。その間カイを頼む。」


「はい!カイト様。・・・今回はどこへ?」


「エルフの森へ行ってくる。カイの紹介にな。」


「わかりました!お気をつけください!」


そう言って元魔王は、城を出ていった。


「エルフの森?」


すごい、ちゃんと話せたぞ。


「えー、エルフの森には、主にエルフとハーフエルフが暮らしていて、エルフの森は、人族と魔族との戦争には無関係で、どちらの国とも友好的な関係を保っている所です。」


「そういえば魔王様。私たち自己紹介がまだでしたね。」


そんな急に魔王様とか言われると、ちょっとびっくりする。


「私たち、正式な名前はないのです。一応立ち位置としては、全員カイト様のお嫁さんのような感じです。」


「・・・名前がないというのはどういうことですか?」


「私たち、全員元々奴隷として働いていて、とても貧乏な生活をしていたところを、魔王様が助けてくれたんです。」


「・・・そうなんですね。すみません辛いことを聞いてしまって。」


「いえいえ、今はカイト様の下で働けていて、とても裕福で全員満足していますよ。」


「・・・なら良かったですが、・・・」


先代魔王の周りにいる女性たちは、全員とても美しい。だけど、その美しさからは想像できない過去があったんだ。


「前の魔王、カイト様の事なんて呼んだらいいと思いますか?」


「ふふ、そうですね、パパなんて言ったら喜ぶのではないでしょうか?」


「それはなんか怒られそうですね。」


結構自然な会話をする。


「てか、エルフの森に行ったら危なくないですか?前まで魔王だったのに。」


「そこは、大丈夫です。カイト様は、エルフの森へ行く時、匂いを人族の匂いにしたり、擬人化して、細心の注意をはらっています。」


「エルフの森へは何をしに?」


「それが、それは私たちにもわかりません。カイト様は定期的にエルフの森へ行っているのですが、理由だけは、一向に教えてくれないのです。」


「隠し事でもあるんですかね。」


「本当に私たちは何も知りません。」


まぁ誰にもいえない隠し事の1つや2つ誰にでもあるだろうし、本当に知らなそうなので追求したりは、しなかった。


「ただいま帰還したぞ。」


30分くらい、結構早く帰ってきた。


「おかえりなさいませ。カイト様。」


「おかえり、お父さん。」


「・・・こいつらに悪知恵を吹かれたのか?」


「いえいえいえ、滅相もないです。」


「・・・そうか。気分は悪くない。・・・」


ちょっと照れてる。


「それより、エルフの森で聞いたのだが、あちらの国は、コツコツとこちらへ向かう戦力を固めているとのことだ。」


「それは、戦いのはじまりが近いということですね。」


「・・・そうだ。」


戦争か。展開早いな。でも戦争が終われば落ち着くだろう。僕は魔王という存在に飲まれていたが、元々は異世界人なのだ。あまり、戦い事に本気になる必要はない。たぶん。


「カイ、お前は戦争中、魔王の大将としてずっと座っていろ。問題は我らで片付ける。」


「・・・わかった。」


「これからお前はこの国を背負っていくのだぞ?」


「何回も言われなくてもわかってるよ。」


「・・・そうか。」


先代の魔王にタメ語で話せている自分に自分でとても驚く。


「それでは我らも準備を始めるぞ。」


「はっ!」




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