第48話 真意

部屋に戻ると、大地は私を抱きしめ眠った。


色んな事がグルグルとしている私に安眠効果を与えて…。

大地が放つ【騎士】の匂い、これが私の鎮静剤になっているらしく…眠りに誘う。

よくわからないけど…気持ち良くて…快楽に浸っているような気がした。

(媚薬?)

そう思わずにはいられない。



****


気が付くと、夜が明けていた。


一緒に寝ても、手を出してこない紳士的な男。

ただ抱きしめて眠るだけ。それにも謎が隠されている発言を昨夜していた。


私はソッとベッドから抜け出すと、服に着替える。

そして…静かに部屋を出た。




目的の場所、それは…父の部屋。

父は全てを知っている。だって、父と大地の企みであるのだから。


歩く速度が徐々に早くなる。


この時間なら、父は起きている。聞くならこの時間しかない。



部屋の前に到着すると、勢いよくノックをした。


「お父さん、入るよ?」

「あぁ、美空か…どうぞ」


中からお父さんの返事。それと同時に私はドアを開けた。

既に着替えが終えている父。

部屋には母はいなかった。

この時間なら、きっと朝食の準備に入っているところだろう。


「どうした?」

「話がある」


真剣な私の表情を見て、父は溜息をついた。そして1人掛けのソファーに座る。


「美空も座りなさい」


向かい合わせのソファーに促され、私も腰を掛けた。


「あまり、時間は無いよ?」

「わかってる」


回りくどい話なんてしない。必要な事を教えてもらえばそれで良いんだ。


「だから、包み隠さず、全てを教えてよ。お父さんと大地は何を企んでるの?」


私の周囲がザワついている。それなのに私自身は何も知らない。ただ流されて、戸惑うだけ。


「お父さんは蓮君の事を消し去りたいの?だから【聖なる炎】を扱える大地をこの学園に招いたの?」


まず、確認したい事。それは蓮君の安否。

父が蓮君を殺そうとしているのなら…蓮君の未来はない。一族から追放されて、姿をくらます以外には。


父は小さく溜息をつく。


「昔と変わらず…今のままであれば…そうするしかない」

「…どういう…こと?」

(昔と変わらず?)

「蓮もその父親も…月村の族長を狙ってた。そして吸血鬼が支配する世を望んでたんだ。

前族長はそれを阻止したいが為に、俺を…目覚めていなかった俺を吸血鬼に導いた。

前理事長の願いは人間との共存だから」


(人間との共存)


つまりこの学園がその理想。小さな敷地内だけど、祖父にとって希望の世界。

父はそれを守るために…受け継いだ。


(蓮君はそれを破壊したい?)


「少しは変わったと思ってたけど…変わっていなかった。

美空を尊重するようなことはないだろう?美空を支配しようとしている」


(支配?…そう…なんだ…)


確かに恐怖から怯えて従ってしまう私。

でも…そんなにその座が欲しいのなら…無理やりにでも私を手に入れる方が早くない?

いや、そんな事されても困るんだけど。

どうして…強引にでも私を妊娠させようとしないんだろう。普段から避妊なんてしなければ、妊娠する可能性高いのに。


妊娠すれば私を手に入れたも同然じゃない。結婚の理由になるんだから。

蓮君の真意がわからない。


(そんなに支配したい世界?蓮君にそんな願望がある?)

私の知る限り、世の中をどうしたいなんて考えていないと思う。


「蓮君を…見捨てないで…」


違うハズ…絶対に、本当の想いは違うはずだから。


「私…蓮君と話す…ちゃんと本音を聞いてくるから…」


だから…蓮君を始末しようとしないで。





…私には蓮君を切り捨てる事は出来ないよ。





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