第36話 束縛

中学3年生の夏休みから始まった束縛。


約7ヶ月続いている行為は私の感覚を麻痺させる。そもそも、蓮君は何で私としたがるんだろうか。


私は知ってるのに…蓮君には他にも抱く女の人がいるって。

週に1度、蓮君は1人の女性と会う。その人は蓮君に血を与える人。

昔から知ってる。彼女は蓮君の事が好きで、蓮君に尽くしているんだ。


血を貰う報酬として要求されているセックスをしていると…蓮君から聞かされた。

週に1度してるなら、性欲満たされてんじゃない?って思う。私を抱く必要なんてないじゃない?って思うのに…蓮君は週に2度私を抱く。

本当に意味わかんない。


一度拒否したら、次の日に外で捕まり誰に見られるかわからないような環境で避妊してくれずに強行されたから…もう抵抗するのはやめた。


愛のないセックスで妊娠なんてしたくはない。

普通に受け入れさえすれば、避妊はしてくれる。だったら、その方が良い。


完璧に調教されてる気がする。

週に2日間も相手しているけど、さすがに生理中は無理なもので…そうすると、その翌週の1日は交わる回数が増える。


今日もそう…もう…何度目?正直体力がもたない。身を委ねているとはいえ、女性側だって体力は消耗する。

愛が無くても、気持ち良いものは良い。快楽は認める。愛情が無くても…快楽に喘いで呼吸が乱れれば心拍だって上がる。

だからもう1日の限界域に達してる。


母が時々寝坊してる時って…父とした時なんだろうなって思う。前に耳にした事があったのを思い出す。「身がもちません!」って怒っていたのを。


こういう事か…。


明け方に更にもう1回戦に入ろうとした蓮君にさすがにストップをかけた。


「今日はもう…勘弁してほしいんだけど…本当に今日はもう無理だから」

「無理そうに見えないけど?」


蓮君は触れて確認する。


「やっ…ダメ…」

「ダメ?」


蓮君はそのまま私に侵入してくる。


「や…あっ、やめて!わかったから!!」


私は慌てて言った。

だって、怖い。拒否は…そういうお仕置きが待っている。私の心なんてお構いなし。最近、よりそう思う。


そこに本当に蓮君の愛情があるのかが今になってみるとわからない。


「蓮君…でも…本当に今は、お願い。約束するから、夜…またココに来るって…」

「…夜?」

「だって今日は私この後、入学式なんだよ?エスカレーターだって高校生になるんだから私。式は参加したいじゃない」


そう、今日は入学式なんだ。こんな事している場合じゃない。付き合いきれないんだよ。


「蓮君だってお仕事でしょ?」

「…わかったよ…」


私はホッとした。やっと解放される。

だって、昨夜22時以降から拘束されて…睡眠をほとんど取れていなくて…今は明け方5時。

ゴミ箱を確認すると捨てられた避妊具は5個に達している。

最初の頃なんて、翌週のその1週間で新しい箱を一箱空けてしまった。

ありえない…そう思っていたんだけど…友達に聞いても、意外と同じらしい。


吸血鬼の男の人は性欲がハンパなく、しかもタフだって。その子は、吸血鬼と人間と両方と経験があるらしく…驚いた。


****


【姫】と呼ばれる私に出来た親友。小学校からの付き合いで彼女は純血の子。だから事情は知ってくれている。


「美空はさ、【姫】じゃなくて【女王】になるべく存在なんでしょ?」

「はい?何それ?」


入学式までの待ち時間、華と会話をする。その話の流れは蓮君の事からだった。


「噂だよ。美空は特殊の中の特殊な存在の吸血鬼なんだって。知らなかった?」

「…知らない」


私の父はハーフでいて族長になったのは知ってる。純血の兄がいたのにもかかわらず。

母はもともと人間で、吸血鬼が好む特殊な血を保持していた…っていう話は聞いたことある。


「理事長のお母さんも、美空のお母さんと同じで人間から吸血鬼になったって知ってた?」

「ううん」


それは初耳。だって祖母は私が小さな頃に亡くなったから。その後を追うように祖父も亡くなった。


「美空は知らない事だらけなんじゃないの?」

「…そうなの?」

「守られてる…って事なのかしら?」

「?」


華は大きな溜息をついた。


「一つ言えるのは…吸血鬼の男共が、美空のお母さんを欲した理由とは違う理由で、美空を欲してるという事かな。そこから蓮さんが美空を守ってる…って事よ」

「わかんないんですけど。蓮君が私を守る?」

「だって一般の吸血鬼が蓮さん相手に叶うはずないじゃない。月村の一族なんだから」


いや、本当に意味がわかんない。蓮君が私を守るなんてありえない。

私の事を大切に思っているのなら、あんな扱いはしてこないのでは?


「美空に見初められて、結婚までしたら次期族長候補になるんでしょ?」

「…そんなの…わからないじゃない」

「でも、美空は一人っ子だし」


大切なのは私じゃない。きっと他の同族の男の人達と同じ、次期族長の地位なんだ。

そうだよね?

父の血を引くのは、今のところ私だけ。ふと昔、母が言っていた事を思い出した。


「美空に弟か妹がいたら…きっと自由になれるはずなのに…」


私に言った言葉じゃない。両親で話していた会話だ。

もし、私に妹がいたら…蓮君はこんな事しなかったのかな?


凄く、夜が憂鬱でたまらない。蓮君から逃げ出したい…。

無意識に大きな溜息をついてしまった。



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