第28話 儀式の前日

儀式の前々日…ここまで何事もなく過ぎていた。


ここ数日の儀式の準備も欠かさず全うし、むしろ入念に入念を重ねているぐらいで…日々が充実している程。


この日もクタクタになる程の熱量で力尽きていた。だから…その影響かな?と思っていたんだ。


****


儀式の前日。

2時間目が始まってすぐに、私は軽い貧血で保健室に行った。今までの貧血と少し違う。

体が熱くて、微妙に吐き気を感じた。

ベッドに横になると、先生が私の様子を窺う。


「清瀬さんは…愁様と男女の関係なんですよね?」

「え?」


先生はニッコリと笑う。


「心配しないで、大丈夫。私は人間ですから。ただ…夫が吸血鬼で、娘が半血なんです」

「そうなんですか?」


私は驚いた。まさか先生が吸血鬼の子供を生んでいたなんて。


「驚かないで聞いてくれる?もし…あなた達がそういう関係で…身に覚えがあるのなら…。

この体調不良は清瀬さんが妊娠した証よ」

「え?」


(に…妊娠?)


「妊娠って…ツワリとかそういう変化って2ヶ月とかじゃないんですか?」


そんなに前に身に覚えはない。儀式の準備もまだ10日経ってないのだ。


「驚かないでって言ったでしょ」


先生は苦笑いをする。


「吸血鬼の遺伝子と人間の遺伝子は違うものだから、人間同士の妊娠の兆候と少し違うみたいなの。私の時もそうだったわ。

どうやら、着床と同時に症状が現れ始めるみたい。きっと生命力が違うのよね」

「着床…って…」


私はそっとオナカに触れた。


「まだ、安心するのは早いけど…。確実だと思うわよ」

「そうなんですね…」


だから昨夜は不思議な感覚だったのか…。凄く体の内側が熱を持っていたのだ。


私は思わず顔がニヤけてしまう。早く、愁先輩に会って報告したい。


「とりあえず、今はユックリ休んで。この先、結構辛くなってくるはずだから」


私は頷き目を閉じた。とても幸せな気持ちで、眠りにつく。



****


私は眠りの中にいた。凄く眠くて意識がハッキリしない。その中で、私は何かを感じた。


人の気配と触れる唇。

唇に唇の感触がして、意識が現実に戻って来る。薄っすらと見えた姿は…。


「愁…先輩?」


絡めてくる舌の感触に違和感を覚えた。

(何かいつもと違う?)

そう思うと一気に意識が回復した。


「!!」


私は驚き、そして暴れた。振り解くことが出来ない唇に必死で抵抗した。


「んっ!!っや!!」


私は思い切り、相手の唇を噛んだ。

顔は離れたけど、体は押さえつけられたままだった。


「蓮先輩、何してるんですか?!」


驚きしかなかった。だって、蓮先輩は監視されているはずなのに。


「最後の悪あがきだよ。キミのせいで色んな事が崩れていったからね。ただの餌でしかないキミのせいで…。

愁が長になり…俺達の上に立つとか気に食わないだろ。弟だったハズのアイツが…キミの血を独占している。

キミはどんなに魅力的な女性なんだい?その血以外にどんな魅力があるんだい?」


蓮先輩の瞳が紫色に変わる…怖い。


「この体で…愁をたぶらかしたんだろ?キミってそんなに良いの?どんなセックスでとりこにした?」


蓮先輩の手が制服のボタンを外していく。


「蓮先輩!何を?」

「だって知りたいだろ。愁を長にまでさせようとするキミの事」


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