第27話 儀式への一歩
誕生日から…4日目…とりあえず学生生活に戻っている。
女子寮には夕映先輩がいて監視してくれているし、潮さんや蓮先輩は理事長と愁先輩が目を光らせていてくれている。
だから私は、普通の女子として過ごしている。
朝、学校に行って授業を受け…門限までは愁先輩と過ごす。夜は寮に戻って優希達と一緒に過ごす…些細な幸せ。
****
「昔は16歳で結婚出産は当たり前だったから…私はそういう悩みとかってなかったわ」
晴れた日の放課後、庭園で葵さんとお茶をする。
同じ立場だった葵さんの当時の心境とかを参考までに聞いていた。
「でも、菜月さんだって…この先を心配をする必要はないんじゃない?だって…愁の伴侶になって【月村】になるのだから」
【月村】になるという事は…今までの時間軸とは違う世界の中で生きていくという事。
吸血鬼一族の世界だから、一般の社会とは違う。
「そうなんですけど…こんな世間知らずでこの先を生きていくのもなぁ…って思いと、まぁ、高校を卒業しても…この世界に足を踏み込むから関係ないし!って思いで複雑なんですよ」
葵さんは嬉しそうに笑う。
「でも、気持ちは決まっているんだもの。本当は特に悩んでいないでしょ?」
「…悩みでは、ないのかな。ただ…未知の世界で不安なだけです」
私は空を見上げた。
「葵さん…空は…昔から変わらないですか?」
「え?」
「いつか…愁先輩と…この空を見上げたいです。出会った頃と今の空を…笑って思い出せるように…変わりないと良いなぁ…」
あの頃と変わらないねって…笑って過ごしたい。愁先輩とずっと。
「私、あと数年は…生きていられると思うけど…。凄く楽しみなのよ。
だって、私の子供の…子供でしょ。あー…私にも孫が出来るかもしれないんだ…そう思うと嬉しくて」
恥ずかしそうに微笑む葵さんを見て、私も何だか照れ臭かった。
愁先輩と私は永遠を誓って、夫婦になろうとしている。という事は、葵さんは私にとって義母になるんだ。
何だか不思議な感じだ。
だって…こんなにも年齢が変わらない容姿をした人が、愛する人のお母さんだなんて…。
「まだですけどね。儀式もまだ保留中ですし。
でも…私も早く会いたい気持ちはちょっとありますよ」
「儀式の為の行為だけど、段々と愛しくて、愛しくて全てが嬉しくなる。離れたくないって思えて、切なくなるの。
そしたらね、この
それはわかる。最初はただ、一緒にいると楽しいと思えてただけだったのに…いつのまにか私は愁先輩がかけがえのない人に変わった。
私の初めての人。
男女の関係になったのも、愛するという気持ちを知ったのも。
死ぬまで一緒にいたい…ずっとずっと…。
「菜月」
愁先輩が迎えに来てくれた。
私は嬉しくて思わず駆け寄り抱きついた。
「私…愁先輩との赤ちゃんが欲しいって思ってますからね」
「え?き、急にどうした?」
真っ赤になる先輩を見て、ハッとなり私も連れて赤くなる。
「菜月流のお誘い?…なんて、ね」
「…そう…かも…よ?」
****
凄く…ドキドキしている…不思議な感覚だ。
少しの罪悪感と不安、それ以上の幸福感。体だけじゃなくて心も満たされる。
感情が盛り上がった私達は躊躇う事なく儀式への準備に突入した。
躊躇いなく…本能のままに。
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