第25話 理事長の思惑
これから…どうなるのだろうか…。
平行線のまま話は終わった。っていうか話にならずに終わったというべきかな?
私は潮さんと蓮先輩が部屋を出て行ったあと、迷わずに理事長の前に突き進んだ。
「これなんですか?」
私の一言だけで、理事長はわかったらしくニヤリと笑う。
「察しが良いね」
「どうして?」
「…秩序を守る…為…かな」
愁先輩が私の肩に手を置く。振り返ると、力なく笑う愁先輩がいた。
「…こうなるような予感はしてた。父さん…潮兄さんは、菜月を手に入れたがるってわかっていたし…それを阻止するには俺がその座を奪うしかないって」
その後に大きく溜息をついて再び話し出す。
「…兄さんは…蓮と同じ…本来は血に飢えた人だ。多分、族長になれば…人間との共存ではなくて…血を求め暴走する。
吸血鬼は人間を餌に…そういう環境になると思う。それを…阻止したかったんでしょ?」
愁先輩が理事長を見て確認する。
「その通りだよ。まぁ、正直言うとね…半分は私欲もあるけどね…前に言った通り、愁に永く生きて欲しいという」
「矛盾ですよ。自分はもうすぐ、隠居して命を全うしようとしてるのに…俺が長生きする必要ないじゃないですか。
半分じゃないでしょ?本当は…この為に俺を目覚めさせたかったんでしょ?」
真っ直ぐと見つめる愁先輩の視線から、理事長は目をそらす。
色々と思う事があるんだろうな…。色々と葛藤とかしてるのかもしれない…。
「色んな感情がね…考えを翻弄するんだよ…。わからないかもしれないけど」
「結局、俺は…この世の中の秩序の為に…そうするべきという事ですよね?」
「そう…いう事かな?」
(愁先輩って…対立出来る立ち位置にいるの?今までの位置と…雲泥の差じゃない?)
そう、思っている私がいた。
これまでとガラって変化する環境というか…。
「愁先輩は…後継人として認められるんですか?だって…純血じゃないですよね?」
そう、言って来てたよね?理事長。
「純血じゃない…けど【姫】の遺伝子を持っているせいか…純血と変わらないパワーを潜在しているんだよ。
人間の菜月さんには感じ取れないだろうけど…下手すると…潮よりも…僕でさえも上回るかもしれない」
「え?そこまで?」
「元々、【姫】は吸血鬼達にとっての活力剤みたいなものだった。
その遺伝子を口にする事で、衰えていくパワーを回復させる役割があった…。
その遺伝子を元々、持っているとしたら?一般の吸血鬼からすると…恐れる存在だよ。活気が溢れてるんだからね」
「そんなに…凄くなってしまったの?愁先輩…」
私は先輩を見た。どこも変わってるようには見えないのに。
「自分でもよくわかんないけど…とりあえず、力はみなぎってる様な気がするかな…?」
愁先輩は肩をすくめた。
「菜月さん、早速だけど…」
「あ…はい」
「愁に…儀式の伝授はもうしてあるから」
キュッと胸が締め付けられた。
(儀式…か)
どんな事をするのだろう。私は先輩の方を見た。すると優しく微笑みかけてくれた。
それだけで…不安は少し和らぐ。
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