第24話 対立
全て順調に進むわけはない…それは何となくわかっていた。
誕生日の昼頃…前夜から明け方まで激しく愛し合い一緒にベッドで寝ていた私達は起床する。
そして目覚めた後は、理事長の部屋を訪れた。
…私を吸血鬼にする方法を聞くために。
部屋に入ると、そこには潮さんと蓮先輩がいた。一瞬、部屋に入るのを躊躇ってしまう。
「菜月さん、こちらへ」
理事長の傍らにいた葵さんが私を誘導する。
私は部屋を確認した。何となく部屋というよりも、社長室の様な…校長室の様な…そんな部屋。
理事長は机の椅子に座り、他の人達はその前に立っている。
私は葵さんと一緒にソファーに座った。
「【姫】は熟したみたいだね」
先に口を開いたのは潮さんだった。私の方をチラリと見る。その視線にゾクッとした。
蓮先輩と同じような視線というか…とにかく怖かった。
「…父さん達がどうしてココへ?」
愁先輩の表情は緊張している様だった。
「父さん…か」
潮さんはフッと笑う。笑う?…いや、目は笑っていない。
「【姫】が熟したみたいだからね、後継者の僕が貰い受けようという話で来たんだよ」
「え?」
「文句はないだろ。僕が月村の…この一族の長になるんだ。彼女の血を自由に出来る権利は僕にある」
そうか…。だから怖いと感じたんだ…。
あれは、獲物を狙う目…。
「今日までは、オマエが【姫】を汚しても何も言わなかったが…今日からは違う。もうオマエに自由はないんだよ。
熟したからには確実に立ち位置が違うからね」
愁先輩は潮さんを真正面から見た。お互いに睨み合っている様だった。
「菜月は…この血を手放すんです。彼女は俺らの仲間になって…俺と共に生きていく覚悟を決めました」
「そんな勝手な事させるわけないだろ」
蓮先輩が鼻で笑う。潮さんも同じように笑っていた。
そんなやり取りを、理事長はただ傍観している。
「蓮は黙ってろ!」
愁先輩はピシリと言い放つ。何の躊躇いもない。
「オマエ、何だ、兄に向って!!」
イラッとした口調の蓮先輩。
(…蓮先輩は…知らないのかな…)
「残念だけど、俺は蓮の弟じゃない。俺は…父さん…潮兄さんの弟だ…」
「は?」
愁先輩の言葉に、蓮先輩は怪訝そうな表情をした。当たり前だよね…知らないのなら。
逆に潮さんは険しい表情になっている。
ここで、愁先輩が弟を名乗るという事は…同じ土俵に立っているのと殆ど変らない。
対立の意思を示しているのと同じだ。
蓮先輩は驚き顔のまま理事長と潮さんを交互に見た。
潮さんは沈黙し、理事長はその蓮先輩の視線をジッと見つめた。
きっとその雰囲気で悟ったんだろう。蓮先輩は動揺していた。
「とにかく、菜月は【姫】じゃなくなる」
「だからそんな勝手な事は許さないと言っているだろう」
愁先輩の言葉に改めて潮さんが口を開いた。
私はそんなやり取りを、ただ見ているしかなかった。
「何で許されないんですか?」
「【姫】を自由に出来るのは、長だけだ。オマエにその権利はない!!」
「だったら!!」
お互いに興奮している。
「俺は長の座をもらう!!」
「!!」
売り言葉に買い言葉という感じだけど…でも、愁先輩は真剣だ。私を守るために。
愁先輩の宣言に、潮さんの表情は険しくなる。
だけど…理事長はその状況を楽しんでいるように見えた。
きっと、これだったんだ…理事長が待っていたもの。
理事長は、潮さんでなくて愁先輩を後継者にしたかったんだと感じた。
(でも何で??敵対するのわかってるのに…)
「とにかく俺は、菜月を…独占するために必要なら、その座を奪いに行くつもりだから」
揺るぎのない瞳。
これから…争いが始まるの??私は不安だった。
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