第23話 愁~目覚め後~

どうなるのかもわからないのに…悩み、葛藤していた。


17歳の誕生日で自分のこれからが決まる。

自分は吸血鬼として目覚めるのだろうか…。それとも人間のままだろうか…。


人間のままでは、吸血鬼達から菜月を守る事はより難しい。俺の力では彼らのパワーに勝てない。

目の前で奪われ…餌にされてしまうのを傍観する事になるかもしれない…。

それは残酷な事だと思った。


だけど…同じ時間の命を全うできる。

俺が人間であれば、永い時間を生きていく事はないのだから。

普通に結婚して家庭を築くことが出来るかもしれない。


吸血鬼として目覚めれば…下級の吸血鬼から菜月を守る事は出来る。ようは家族だけが敵になるんだ。


だけど…俺は菜月との出会いが一瞬になってしまう。一緒に過ごす時間より、失った後の時間の方が確実に永い。

そんな時間に耐えれるか自信がない…。


暇があると、ついそんな事ばかり考えた。


ちなみに、菜月の血を含んだのは本当に無意識だったのだけど。


初めて菜月を抱いた時…かなり興奮してた。

今まで知らなかった、菜月の体は思っていた以上に女らしく欲情させるものだった。感じる表情も声も…感極まった。


急激に目覚めた本能が…俺の体に影響したけど…そんな事を忘れ去るほど、愛しくて…。

初めての吸血行為で驚くほど活力に溢れ…初めての菜月を夢中で欲した。


このまま時間が止まれば…何度も思った。



次々と明かされた事実に、冷静な自分がいて…その内容から、少しだけ希望が見えたような気がした。

望めば…全てが上手くいくかもしれない。菜月が全てを受け入れてくれているのだから。


彼女は自ら仲間入りして、特殊な血を消すと言った。そして俺と共に永い時間を一緒に生きると…。

その愛情に震えた。


俺の本当の母親も…菜月と同じ思いだったのだろうか…。母親の話を聞いて…どんな女性だったのかと想像してみた。

すると一人の女性が頭に浮かんだ。

きっと…あの人がそうなんだって…。


他にいないじゃないか。

祖父が一心に愛情を注ぐ相手…いつもソバにいる人…。祖父の愛人と呼ばれる彼女…葵さん…。


今まで俺は父の愛人の息子だと思っていたから…母親を知る由もなかった。

でも…俺は祖父と名乗る人の息子らしいから…それなら、彼女しかいない。


葵さんは菜月より前の特殊な血の持ち主で…俺はその彼女の血を受け継ぐもの…。


色々と祖父や葵さんに話を聞きたい。俺達の今後の為にも…。

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