第21話 誘惑
呼吸を乱しているその姿に…私はそっと肩に手を添えた。
愁先輩…あの日以降…血を口にしていない。結構、この状況って拷問なのかなって。
「愁先輩は…私以外の人の血を吸うの?」
「え?」
「私は…本当は…愁先輩の為に、人間のままで…血を与える者の方が良いのかなぁ?」
愁先輩はマジマジと私を見る。
「何の話?」
今度は私が先輩をマジマジと見る。
「血を求めないのって…キツイんじゃないですか?」
「…違う…これは特殊の血に当てられただけだよ…」
「そう?」
私には本当のところはわからない。だけど、今、欲しているはわかる。
「良いよ…少しなら…」
愁先輩は大きく溜息をつく。
「菜月…ただでさえ匂いで誘惑されるのに…
言葉でも誘惑するなよ…。俺、そんなに意思強くないよ?」
「愁先輩だから良いの。だけど、その対価に…壊れそうなほど…愛してくれる?」
凄く、凄く、愛されたい。特別な夜だから…余計に。
愁先輩は愛しそうに私を強く抱きしめた。
「愛してるし。…可愛い過ぎて手加減できないかもな…」
「んっ…」
愁先輩からの深く甘いキスに私は酔いしれる。絡まる舌に翻弄される。
全てを脱ぎ捨てて、ベッドの上で抱きしめあう。肌の温もりが気持ちいい。
愁先輩の動きが私を昂らせる。
唇から移動するキスは、舌を這わせて体を味わう。
仰け反る体…神経が集中する。
そして首元に戻ると…一瞬躊躇いながらも牙をむいた。
「っんく…あっ…」
快楽の中に訪れた痛み…突然で驚いたけど、苦ではなかった。
その行為が終わると、先輩は傷口を舐めた。みるみると傷が消えていく。
「菜月…」
優しく見つめる瞳は紫から通常に戻っていった。
「美味しかった?」
「凄く」
愁先輩は微笑み、そして続けた。
「でも、こっちも欲しい…」
繊細な動きに私の体が反応する。恥ずかしいのに「もっと」と求めてしまう私。
愁先輩が愛してくれていると思えば、体の奥から欲情してしまう。
「菜月…いい?」
「ん…きて…」
愁先輩が私の中に入って来た瞬間に、体がキュンと締め付ける。まるで逃がさないとでも言うように。
それが先輩をより興奮させる。
「愛してる…」
繋がって溶け合うような熱さを帯びている体。
愛してるじゃ足りない…。
お互いがお互いのモノだって感じたい。
それくらい感情的になっていた。
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