第15話 真実
ガチャリという音で、私は扉の方に視線がいく。扉を開けて入って来たのは理事長だった。
「残念だけど、愁は純血と同じように生きていく事になるよ」
「理事長…」
理事長は私の事を見ると優しく微笑む。
「菜月さん、聞き入れてくれて感謝します」
「そんなつもりは…なかったんです…」
私は少し気まずかった。この話は愁先輩にしていないから。
「何?何の話?」
そう…なるよね、気になるよね…。
「愁に、菜月さんの血を一滴だけで良いから口にさせて欲しいって、頼んだんだよ」
「…だからか…傷を舐めた時に、菜月が慌ててたのって…」
私は苦笑いした。
「理事長がそんな事言うのって…何かありそうだって思ったから…怖くて…」
実際に愁先輩は吸血鬼に目覚めてしまったけど。
「俺が勝手にやった事だから、あの時の事は気にしなくて良いよ」
愁先輩は優しく、責めたりはしないけど…私は正直、本当にそれで良かったのか悩んでいる。
悩んでも仕方がないのだけど…。
「で…何で俺が純血同様?」
愁先輩は理事長に質問していた。
「愁先輩…そういえば理事長がいきなり来た事…戸惑っていないですよね…何で?」
私的には、今どうして、ココに姿を現したのか疑問なのに…。
「気配感じてたから…近付いてくる」
そんな事もわかるんだ…。だから意識がそちらにいっていたのか。
理事長は嬉しそうに笑っていた。
愛しそうに愁先輩を見つめる瞳は孫を見ているというより…。
「理事長の…本当の狙いってなんですか?」
私はその真実が知りたいと思った。
蓮先輩達に圧力をかけて、私を守ってくれたのは…私を守るのではなくて、愁先輩を吸血鬼として覚醒させたかったから…?
愁先輩を覚醒させるのに、私を利用したんじゃないかって…思った。
「んー…そうだね…。とりあえず言えるのは…キミが特殊な血を保持してようが、してなかろうが…関係なかったのは確かだね。
必要だったのは、愁が心から欲する女であって…それがキミだっただけの話だよ。
まぁ、キッカケはやっぱり血だったのかもしれないけどね」
淡々と説明をする理事長の目は…複雑そうなものだった。
「理事長が愁先輩にこだわっている理由って、孫だからじゃないですよね?」
「菜月?」
突然の攻撃的な私の言葉に愁先輩が驚いていた。正直、私自身も驚いている。
でも…何も知らないわけにはいかないでしょ?
私は真っ直ぐ理事長を見た。真剣な私の視線に理事長は諦めたかのように笑った。
「菜月さんの思っている通りだよ」
私は首を横に振る。
「私の考えと真実が一緒だとはわかりません。ちゃんと…理事長の口から…真実を話してください」
そんな曖昧な返事なんていらない。本人の口から言葉で示してほしいのだ。
理事長はチラリと愁先輩を見た。そして大きく一つ溜息をつく。
「愁は…僕の孫ではない…。孫ではなくて…実の息子だよ…」
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