第13話 満月の夜

私は愁先輩を優しく抱きしめ、キスをした。


「愁先輩が私を殺すわけないじゃない。そんなのあり得ない」

(そんなのあり得ない)

「愁先輩は…私の事を愛してくれてるんでしょ?」


フッと先輩は笑うと、私の顔を引き寄せキスを返してくれた。私はそのキスに勇気を出して自ら舌を絡める。

それに応えるかのように先輩は起き上がり私と体の位置を入れ替える。


「ああ、そうだよ。愛してる…菜月…」


耳元で囁きながら私の体に触れる先輩。


「っん!」


指先が体をなぞり…感じる部分を探していた。そして一番弱い部分に触れる。

過激な反応を示すと愁先輩はソコの刺激を始めた。


「え?やっ…あっ……いきなり?」

「いや…多分、この方が…良いと思う」


愁先輩は繊細に指でソコを刺激する。

でも、私…初めてなのに…もうソコ?って思っちゃうんですけど…。


「菜月…ごめんな、ありがとう…」


体が大きく反応する。快楽に支配され、脳が麻痺していた。


「ぁんっ!ダメ…!」


悶えて、全神経がそこに集中する。その刺激によってピークを迎えようとした瞬間…。


「はぁっ!!くっ、あ!」


首筋にズキンっと痛みが走る。だけど…それは一瞬だった。


達すると同時に噛みつかれ、脱力すると同時に吸血は終わっていた。ほんの短い時間…。


だけど…そのほんの少しの吸血で愁先輩はみるみる回復していた。

蒼白だった顔も一瞬でもとに戻っている。


(凄い…回復力)


私の方は、噛まれた余韻よりも達した余韻の方が強く…体が震えていた。


「菜月…体…平気?貧血とか起きてない?」

「大丈夫です…。愁先輩は?もう…平気ですか?」

「ああ、おかげさまで…」


愁先輩は私の様子を確認していた。その瞳の色は通常に戻っていた。


「瞳の色…」

「?」

「さっきまで紫だったから」

「そう…なんだ?そっか…」


もしかして自分では自覚ないのかな?

(…そうだよね、自分では鏡見ない限り見えないものね)


「菜月…」

「あ…」


愛しそうに頬に触れ、軽くキスを交わす愁先輩。そうだよね…本当の目的はここから…。私達は今日、結ばれるつもりで一緒に過ごしているんだから。

私は再び近付いてきた先輩の唇を瞳を閉じて受け入れた。


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