第12話 血の影響

月の光のせいだろうか…?気のせいだろうか…?愁先輩の表情が少し、蒼白なような気がした。


「でも…先輩?もしかして…調子悪いですか?」

「ん?…そんな事はないよ」


愁先輩、笑顔を見せてくれたけど…やっぱり少し、ぎこちない。気になりながらも、愁先輩に身を委ねる。


着ていたブラウスのボタンを外され、胸が露わになると愁先輩は顔を埋めた。


「ドキドキが早いね…」

「緊張…してますから」

「菜月の肌…白くてキレイだね」


愁先輩は私の胸から首筋に舌を這わせた。その行動にビクンと体が反応する。


なんだろう…ちょっとした違和感…。私は愁先輩を確認する。

(やっぱり…様子がおかしい)


「先輩?」


ピタリと動きを止めている愁先輩を覗き込む。

何かに耐えているように目をギュッと閉じていた。


「先輩、やっぱり…具合悪いんじゃ?」


私は愁先輩の頬に触れた。それに驚くような反応で、愁先輩は目を見開く。

私はその瞳に釘付けになってしまった。


愁先輩の瞳の色が…紫色に変化していたのだ。

愁先輩の本来の瞳の色と違うそれは…蓮先輩が私の血を奪った時に見せた瞳の色と同じものだった。


「せ…ん…ぱい…」


愁先輩は、私から体を離して立ち上がった。だけどフラリと崩れ落ちる。


「愁先輩!?」


私は慌てて、愁先輩のもとに向かおうとした。

それを愁先輩は無言で、手でストップをかける。


「先輩…でも…」

「大丈夫…だから…」


その言葉に力はない。呼吸が次第に荒くなって、体で呼吸をしている。


(多分…。いや…絶対にそうなんだ…)


「先輩…良いよ…。血が欲しいんでしょ?」


先輩は首を横に振るけど…急激に…血相が変わっている。

(月の光のせいじゃない)

先輩は…17歳になる直前に…吸血鬼として目覚めてしまったんだ。

そして…それはきっと…あの日、私の血を舐めてしまったせいなんだと思う。


理事長は、この日を待っていたのかもしれない。

これが…私達の運命だったのかもしれない…。


「…ごめん…。今日はちょっと…無理かも…」


力なく笑う愁先輩に、私は軽く苛立ちを覚えた。強引に腕を引っ張り、ベッドに引きずりこむ。そのまま押し倒して、私は先輩の上にまたがった。


「な…つき?」

「何で笑うの?本当は辛いんでしょ?吸血鬼の血が…目覚めちゃったんだよね?私、その瞳の色…知ってるもの」


愁先輩は、手で目元に触れる。


「私の血…舐めたから…」

「菜月のせいじゃないから!」


涙が溢れて、ポロポロと零れる。

このまま愁先輩が弱っていくのかもしれないと思うと…耐えられない。


「先輩…私は、全てを先輩に捧げる覚悟でココに来たんだよ?体だけじゃなくて…私の全てを…。だから…血ぐらい…なんともないんだよ?」


真っ直ぐに見つめ合う私達。


「俺が…怖いだけだよ。蓮のように…血の味に餓えて…菜月を殺してしまうんじゃないかって…」


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