第11話 初めての時
変化は確実に…ジワジワと訪れていた。
私の血を舐めてしまった愁先輩は今のところ特に変化はなかった。
本人も特に異常を感じていなかった。
そして、愁先輩の17歳誕生日の前日まで無事に経過した。
きっと愁先輩は、このまま人間として生きていく事になる…そう思っていた。
「菜月、今日はお泊り?」
「え?」
優希の冷やかしに私は真っ赤になった。
「愁先輩と一緒に誕生日を迎えるんでしょ?」
「何で…知ってるの?」
「その緊張感から察したまでです」
クスクスと笑う優希に、私は自分の余裕のなさを感じる。
私は…今夜…愁先輩と結ばれる事になっていた。それは愁先輩が望んだこと。
私の全てが欲しいと…。そして、私もそれを望んだ。
「頑張ってね」
「う…うん」
****
図書館の奥に隠し部屋があるんだって愁先輩が言った。昔からある秘密の部屋。
どういう経緯であるのかは知らないけど、時々…家にいたくない時に使ってるそうだ。
「この図書館ってさ、昔は月村の別館だったらしくて。改装はしてあるけど、ココだけは特別で残したって…小さな頃、祖父に聞いた」
「理事長って永い年月生きてるって事は…愁先輩の親戚って多いの?かなりの、オジサン・オバサン・イトコがいる?」
ちょっとした疑問。知らない親戚、多そうだと思ったから。
「実はそうでもない。祖父は父と葉月の当主しか今は子供いないんだ。他にいた兄弟は、純血でなかったから早々に亡くなってる。
薄くなった血の行方まではさすがにね…」
私は理事長の「永遠なんてない」という言葉を思い出す。
あの時の様子から理事長は吸血鬼一族の繁栄は望んでいないようだった。
(そんな人が始祖?)
「吸血鬼って月村と葉月だけじゃないんでしょ?」
「まぁね…祖父は…正確には初代じゃないから…。始まりなんて…定かじゃない。
統一が始まったのが…祖父からなだけであって…祖父に勝る血族がいなかっただけって話」
そうなんだ…と、頷く私。
(色んな事情…か…)
「そんな事より…菜月…」
愁先輩の甘い声に、胸が跳ね上がる。ドキドキうるさい私の鼓動。
肩に愁先輩の手が置かれる。私はチラリと先輩を見た。
「そろそろ、我慢の限界なんだけど?」
「げ…限界って…何ですか?」
わかっているけど、あえて濁す。だって恥ずかしいから。
だけど、愁先輩は…容赦なく私の唇を塞いだ。
私は愁先輩の背中に腕を回す。そして深く情熱的なキスを必死に受け止める。
部屋に置かれたベッドに促され、キスをしながら進む。その流れのまま、私は押し倒された。
一度唇が離れると…愁先輩は私を見つめた。
「ごめん…先に謝っておくよ…」
「何を…ですか?」
真剣な瞳に私は緊張していた。
「正直、余裕ないから…。最後まで止めれないと思う」
私はその宣言に思わず笑ってしまった。
「止める必要、ないじゃないですか」
嬉しくて、愛しくて、私の方からキスをした。
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