第7話 守る者と守られる者
男も…女も…関係ない。
『【月】に気をつけて』
華南の言葉の意味をようやく知った。
吸血鬼な家系の人々は名前に【月】が付いてるらしい。確かに私に近付いて来た人達には【月】が付いていた。
知り合い、お近付きになってくる学生。
純粋にお友達になれると思って嬉しかったのに…殆どが私の血目当てだって知った。
男子なんか、強引で俺様。無理やり吸い付いて来ようとした人も中にはいた。
そんな感じなのに、今無事でいられるのは…愁先輩のおかげ。
毎日のように私に会いに来てくれて、誰も触れられない様に見張っていてくれる。
何も知らない一般の人達は、私達が付き合い始めたのだと勘違いしていた。
気が付けばもう5月も中旬。私の16歳まで約1ヶ月。
よくわからないけど…16に近付くにつれて血が濃くなっているらしい。
「正直…俺にも限度があるから…こんなに魅力的な匂いを漂わせられてたら…」
「それって、どんな匂いなんですか?」
私にはわからない…普通の人にはわからない匂い。吸血鬼の血族だけが嗅ぎ分けることが出来る…匂い。
「そうだな…例えるなら…金木犀かな」
「結構…強烈ですね…」
ある程度の距離、その匂いを感じることが出来る金木犀。近くなるにつれて、その匂いは強烈になる。
「俺は、吸血の本能が無いから耐えられるんだろうな」
そう言いながら愁先輩は目をつぶった。
昼休みの中庭。一緒にお昼を食べてココで過ごすのが日課。
木の下でマッタリしていると眠くなる。私も小さく欠伸をした。
「あら…愁ってば寝たの?」
横から声をかけてきた女生徒。栗色の髪の毛に、赤茶色の瞳。まるでお人形みたいな容姿のその人…。
「
「こんにちは」
微笑むその姿の麗しい事。彼女は…正真正銘の吸血鬼。月村の分家…
「吸血鬼が獲物に近付いてるのに寝てるなんて…ナイトとしては失格じゃないかしら?」
「相手が夕映先輩だからですよ」
私はニコリと微笑む。
「でも、本当に…菜月ちゃん…心配じゃない?」
これまで夕映先輩に何度も言われた事…。
私が自分の身を守るためには…理事長の擁護が必要だって事。
誰も手出し出来なくするには…力がある者に守ってもらうべきだって。
「愁が純血で資格があれば…越したことはないのにね…」
「夕映先輩は…平気なんですか?」
「菜月ちゃんの匂い?そうねぇ…魅惑的ではあるけど…私、女の子に興味ないから」
楽しそうに笑う夕映先輩。最初は警戒してたけど…知ってみると気さくな人。
「本当だったら蓮に守られる方が良いんだろうけどね…。アイツ…本能のままだから」
「本能の…?」
「そうだよ。そういえば知ってる?愁の異名」
「何ですか?ソレ」
「噂に聞いていない?愁は女癖が悪いって…」
私は前に華南が言ってた事を思い出した。
「その名も【処女キラー】…改めるとダサイわね」
私は苦笑いしている夕映先輩をジッと見つめた。
「それって、本当なんですか?」
「ええ、本当よ」
今の愁先輩を見ている限り、そう思えない。
「ただ、その原因は蓮のせいだけどね」
「え?」
「愁は…女の子たちを…守っていたのよ…。蓮の本能から…」
蓮先輩の…本能…か。
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