第3話 再会

高校1年生になり私は寮生活を始める。


お嬢様が多い学園だから、寮生活する人は少なかった。

寂しいような気もしたけど、それほど気を使う必要もなくてラクだった。


入学式の人数も少なく…全体40人くらいしかいなかった。約、1クラス分。

始業式の前日の入学式は高校の教師と在校生の代表…その他来賓くらいしかいなかった。


ただ、その在校生代表に彼がいた。

2年生代表…月村愁

3年生代表…月村つきむられん


同じ姓の3年生代表のヒトは愁先輩と容姿が似ていた。

黒髪で赤茶色の瞳…愁先輩を優等生風にした感じという印象だった。


背後で他の新入生が小声で話す。


「あの在校生代表2人って、兄弟らしいよ」

「そうみたいだね、しかも理事長の孫なんでしょ?」


愁先輩たちって有名な人なんだ…その時はただそれだけの感想だった。

だって、私が2人と交流を持つなんて思っていなかったし。

きっと愁先輩だって、私の事なんて覚えていないって思ったから。


正直、私は愁先輩に会えて凄く嬉しい気持ちだったけど。

出会った時に惹かれていた想いは、会えない時間で少し育まれていたみたいで…再会した時には、恋が芽生えていたんだ。


『キーンコーンカーンコーン…』


校内に響くチャイムの音。入学式が終わり自由な時間。寮に戻る人、家に帰る人それぞれ。


私は真新しい制服に身を包み、学園内を散策する事にした。だって、ワクワクするじゃない?新しい事って。


教室を出て、廊下を進み、入学式のあった体育館へ向かう。もしかしたら、まだ愁先輩がいるかと思ったから。


中を覗くと、まだ数人ほど人が残っていた。私はその残っている人を確認する。


「あ」


4人ほど集まった人達の中に愁先輩がいる事に気付いた。よくよく、見てみると…皆似ている気がした。

私の視線を感じたのか、それぞれがコチラに振り返った。

悪い事をしているような気分になりソワソワしてしまう。


「菜月?」


愁先輩が私に気付き、驚いた表情をしていた。そして小走りに私に近付いてきた。


「菜月…だよね?」

「あ…お久しぶりです!愁先輩。あの…無事、入学できました」


私は照れながら笑う。愁先輩は驚きの後、微笑みに変わった。


「おめでとう!」


私の頭をクシャクシャと撫でる。それが照れくさくて、でも嬉しかった。

頑張ってよかったって思えた。


「愁?」


私達のやり取りを見ていた男の人が、近付いてきた。見た感じ30代の愁先輩に似た男性。

落ち着いた雰囲気で、妖艶な人…。瞳の色が紫で…惹かれる気がした。


「その少女は?」

「あ…えっと、今年の高校新入生で…清瀬菜月さんです」


愁先輩は微妙に緊張しているように思えた。


「き…清瀬…菜月です。初めまして」


私は不思議な感覚になりながら、挨拶をする。


「愁の…父親です。どうぞ宜しく」


優しく微笑み、手を差し出してきた父親。私はその手を軽く握った。

父親は、私の事をジッと見つめてきた。


「キミ…僕の愛人になるかい?」

「は?」


真面目な表情で突拍子もない言葉を吐く父親に私は呆然とした。


「何を言っているんですか?」


愁先輩も驚き、突っ込みを入れる。


「僕は大真面目だよ」


父親はフッと笑った。






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