第2話 出会い
私は彼と出会う為にココに導かれたんだ。
*****
私達の出会いは、1年前になる。
エスカレーター式の私立校である
敷地内には、図書館と希望者専用の寮がある。
私は家庭の事情で、寮のある学校を希望していた。
中学3年生の私。
高校から受験する人は少ないらしく、珍しい存在として見られた。
受験前の夏休みに、下見として学園に訪れた時…私は愁先輩と出会った。
広い敷地で迷子になった私。
自然豊かで、慣れないと右も左もわからなくなるほど木々に囲まれている。
道なりに歩いていたつもりだったのだけど…気が付くと学生寮付近まで入って来ていたらしい。
たどり着いたのは、一番奥に配置されている図書館だった。
この図書館は寮生専用の建物で一般生徒の立ち入りは殆どない。
正確には、この図書館は
月村一族っていうのは…この学園の創立者であり理事長の一族。
古くからの血筋らしくこの地域では有名らしい。
そんな人達の憩いのスペースである図書館に迷い込んだ私。何も知らないから、踏み込めたんだ。
「誰?」
背後から突然声をかけられて、驚き振り返る。確認したその姿に私は息をのんだ。
映画俳優の様な麗しい容姿のその人は、爽やかでスタイルが良くて…少女漫画から飛び出してきたのではないかと思うほどだった。
少し茶色がかった髪の毛に、少し赤っぽい茶色の瞳。
「あの…ごめんなさい。迷ってしまって…」
「ここの生徒じゃないの?」
「えっと…来年、受験する予定なんです」
「へぇ…珍しいね」
高すぎず低すぎない声。惚れ惚れする。
「キミの名前は?」
真っ直ぐな瞳にドキッとした。
「
「
「え?」
「俺の名前」
淡々と自己紹介をしてくれた愁先輩。微笑ましくて顔が緩んだ。
「14歳?」
「あ、いえ。6月に15歳になりました」
「俺も6月に16になった。誕生月、同じだね」
些細な事で、愁先輩は笑顔になる。その笑顔が何だか可愛い。
「菜月」
「え?は、はい?」
突然、名前で呼ばれて驚く。
「敷地内、案内しようか?」
「良いんですか?」
更に驚きつつも笑顔になる。優しさが嬉しかったから。
愁先輩は、私の手を繋ぎ歩き出した。初めての経験でドキドキが止まらない。
一瞬、夢なのではないかって思った。
案内してもらっている間、楽しくて会話が弾む。私の中学の事、この学園の事。
「菜月、頑張って入学して来いよ」
「そうですね!頑張って入りたいです」
せっかく愁先輩と出会えたのだから、このままサヨナラも寂しい。
「待ってるからな」
優しい笑顔と声。私はこの時、愁先輩に魅了されていたんだ。
私は頑張って受験勉強して、入試を受けた。
何とか合格して入学が決定する。
時々、手続きやらで学園に行っても…愁先輩と再会する事はなかった。
結局、入学するまで会えなかったんだ。
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