10

俺は思わず駆け寄って行く。

「結梨…!」

俺が呼びかけると

結梨が勢いよく振り返る。

「……あ…」

俺と目が合い、結梨が俯く。

「……」

沈黙が続く。

俺が口を開きかけたとき

「あの!今日……ちょっと話が……」

と結梨が切り出す。

「……あぁ……」

結梨が俺を連れて近くの喫茶店へ入った。

昔からある静かで小さな喫茶店。

かなり歳を召したマスターが

1人でのんびりとやっている。

俺たちはマスターの挨拶を聞き流しながら

カウンター席に座る。

マスターがメニュー表を持ってくる。

結梨が

「あ、すいません」

と言うと

マスターが

「ご注文は?」

と尋ねる。

「えっと…」

結梨は目線だけちらりと俺の方を見る。

「先に頼んでて」

そう言うと結梨は少し悩んだ後

「ミルクティーで」

と言った。

マスターが

「かしこまりました」

と言って厨房へと姿を消す。

再び沈黙が訪れ結梨が口を開きかけたとき

カランコロンと店のドアが開き

「アンタなにしてんの!」

血相を変えた愛亜が入ってきた。

「いいから行くわよ!!!」

そう言い愛亜は結梨の服を掴む。

「痛い……!」

結梨が声をあげるが

愛亜は全く聞く耳を持たない。

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