第4話 魔法少女は働く


 そうして魔法少女になる決意をし、魔法少女のあれやこれやを教わり1か月の研修期間が過ぎた。

 表向きは喫茶店のウェイトレスとして働きつつ、要請があれば魔法少女として働いている。魔法少女として働くといっても魔法をバンバン放って戦うとかではない。あくまで騒動の鎮圧として、武器などを持ち出した人から武器の没収、興奮状態にあるようなら意識を奪い鎮圧化、そして周囲に巻き添えとなりそうな一般人がいたときの救出。これらが任務となる。


 魔法と言っても万能ではないらしく、今は基本の身体能力をあげることと少しの飛行能力、防御力をあげることに透明化、それから記憶の操作や一部の精神に干渉する魔法。それから一人に1つ配布される固有魔法。固有魔法はまだ実験段階のもので付与の練習をしていた開発陣がどの服にどの魔法を付与したのかわからなくなってしまい、それならと一人に1つ配布し固有魔法としてしまえ、となったらしい。

 一応実験段階で魔法を使用することで命への危険がないことは保証されているが、魔法によっては発動条件が難しく効果が確認できなかったり、正しく発動しないこともあったようだ。

 そのため、人によって固有魔法は風を操る、など汎用性の高いものからいまだに効果がわからないものもある。こればっかりは運次第らしい。ちなみに魔法は服に付与されているが、服を交換してもほかの魔法は発動しないことから服に付与された魔法は個人のものと認識されているそうだ。


 私の固有魔法は未だ不明だ。発動条件が難しいのか正しく発動しないはずれを引いたのかはまだわからない。


「澁谷さん、A卓お願いします」

「わかりました」


 アルファベットの要請は出動要請、呼ばれたらバックヤードに戻り、店長から詳細を確認し現場で対応する。


「やぁすまないね、今日は予定があるというのに」


 そう、今日は叔父がバイト先に見学に来る日なのだ。無事研修が終わった旨を伝えたところ、「メイド服姿の咲ちゃんが見たい! 職場見学を要求します! 店長さんに話通しといて!」とのことで、本日15時に店に来ることになっている。


「時間までに終わりそうな内容なのでしょうか?」


「うん、そこの大通りでバスの事故が起きたみたいでね、どうやら巻き込まれた人がまだバス内に残っているみたいなんだ。その救出をお願いしたい」


「わかりました、すぐに出ます」


 詳細を確認を終えると私は透明化の魔法を使用し、裏口から飛び出す。ほかに出動している魔法少女はいないようなので速攻で終わらせるのがよさそうだ。


 現場付近につくと人だかりが見える。私は助走をつけて人混みを飛び越え、バスに着地する。割れている窓からのぞくと1人の女性が倒れているのが見えた。私は女性を担ぎあげ、バスから飛び出す。


「こちらに女性が一人逃げ出してきました!」

「意識はありませんが脈はあります」

「大きなけがは見当たりません!」


 付近の人が女性に気づき、救急隊員へ声をかける。これで女性はもう大丈夫だろう。

 私は成り行きを見届けてから店へ戻る。叔父が店にくるまであと10分だ。



「おー、お疲れ様。今日も助かったよ。まだ叔父さんらしき人は来てないから安心して、魔法解除して軽く息を整えておいで」


「ありがとうございます、そうします」


 私は乱れた髪や服を整え、軽く化粧も直し店に戻る。そのすぐあと、チリンと扉につけられたベルがお客さんの来店を知らせた。

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