第2話 固有魔法

 魔力...それはこの世界に普遍的に存在する力

自然界にあり、物質にあり、生き物にあり、人間にもある

人間は体内の魔力を使って魔法を発動させる。

火水雷土風の基本の属性に光や闇、氷などの特殊属性などがある属性魔法、物体浮遊や防御魔法などの汎用魔法も合わせたら魔法の種類は無数にある。同じ魔法でも使用者の使い方次第で効果が全く違う時もある。

しかしただ1人しか使えず。使い方などで違いが現れない魔法系列がある。

《固有魔法》

それは莫大な力を持つ魔法

記憶の魔法や炎の魔法など個別の名称がつけられまた使用者も別名がつけられる『魔女』と。

魔女と呼ばれる者たちは全員が普通の人よりも多くの魔力を持ち、そして魔法の使用に長けている。魔女1人でそこら辺の王国の魔法騎士団と同じ戦力とも言われる。

そしてこの世界にはそんな化け物が7人存在すると言われている。


 故郷を出発してとりあえず1日頑張った。

初めての野営は少し怖かったけど初めて挑戦することにはワクワクする質なので夜はなかなか寝れなかった。

朝早くに起きてまた歩を進める。


魔法具【ワールドマップ】


紙を広げるとこの大陸の地図が浮かび上がってきた。

私は今、ネフテリア大陸の北東に位置する私達が住んでいる領地を支配しているユリビア王国目指して南へ進んでいる。南の方へ行くと魔獣との接敵も減ってペースも上がってきた。


「確かこの先には小さな街があるはずなんだけど」


見晴らしの良い草原に立っても全然それらしい建物は見つからない。見えるのは廃墟とそこからの煙しか見えてこない。


街があるであろう場所はちょうどその廃墟の場所のようで崩れ去った建物からはまだ少し炎の熱を感じた。

誰かいないか探そうとした時、声が聞こえた。怯えている声だ。


「たす...けて...おね.....ぃ」


崩落した建物の中から聞こえてくるその声は今にも消えてしまいそうなほど細かった。

魔法で瓦礫をどかしてその子の元へたどり着きその手を取るとその手は既に冷たく、開かれたままの瞳は光を失っていた。せめてこんな薄暗いとこではなく明るいとこで寝かせてあげようとさらに瓦礫をどかしていくと子供の身体が全て見えるようになった。

左足はぐちゃぐちゃに潰れ、腹からはいくつか赤黒い物体がはみ出ていた。

あまりにも悲惨な状態を見て私は吐き気を覚えたが私はその子の頬に手を添えた。


「ごめんなさい」


この子の魔力を感じる。まだ魔力はこの身体に残っているようだ。そして私の魔力と繋がったような感覚を覚えると手から子供の冷たい肌の感覚が消えて手には一輪の薔薇の花が私の手の中に現れた。その子供の姿はどこにも無くただ少しの花がそこに咲いていた。

 私が瓦礫の中から出ると馬に乗った騎士達がやってきた。王国からの救助が来たのだろう。


「生存者は君だけか?」


「いえ、私は旅の途中でここに立ち寄っただけです」


いかにも隊長みたいな人が話しかけてきたので私の情報を渡して先に進もうとしたら止められた。


「待ってくれ、王国へ行くなら私達と同行するとよい。ここはまだ魔獣が出るからな」


私は王国までの乗り物を手に入れたのだった。


 ユリビア王国

ネフテリア大陸内でも大国と呼ばれる国の1つ。

この国では主に軍事産業が発達して特に魔力兵装シリーズは他国に輸出して稼げるほど大人気らしい。

門から入ろうとすると何やら門番と通行人でもめているようだ。


「だから!そんなもの知らねぇって!」


「ですがこれはあなたの荷物から出てきましたよ」


どうやら危険物を持ち込もうとした人が尋問を受けているようだ。ここ持ち込み禁止な物があるんだ。


「あの隊長さん?」


「ん?なんですか?」


「その、私の荷物は見なくていいのですか?」


「君の荷物?そのカバン以外にもあるのか?」


「はい、空間魔法でいくつか物をしまっています」


私の発言を聞いた途端、隊長さんが肩に手を置いて私と向かい合った。隊長さんは今までにない真剣な顔で言った。


「君は今、空間魔法と言ったね?転送魔法ではなく空間魔法と」


何やら重要そうな感じで言うけど魔法が違うだけでそんなに真剣になるのかな?


「はい、空間魔法です。そっちの方が遠くても早く取り出せるので」


隊長さんの顔がどんどん引きつっていく。そして周囲の騎士たちもなんだか臨戦態勢をとっているような気がしなくもない。


「その〜お嬢さん、ちなみにその空間魔法でしまっているものを見せてもらってもいいかな?」


「いいですよ。別に見られて困るものは無いですし」


一旦馬車から降りてそこら辺にしまっているものを全てぶちまける。キャンプの道具にその他旅に便利な魔道具などがドサドサって落ちてくる。


「この魔法は本物だな。初めて見た」


騎士の皆さんが私の荷物を調べる間に隊長さんから話があると言われて馬車に戻った。


「単刀直入に聞こう。君の魔法の先生は誰かな?」


「お師さまですか?イアスという人です」


「イアス...どこかで...」


また隊長さんが頭を抱えて悩み始めた。悩みの多い人だなこの人。


「グレン隊長、荷物の確認終わりました。危険物などは見当たりませんでした」


「分かった。まぁ後で考えるか」


騎士の人に連れられて荷物をしまうと騎士の人達と共にもんをくぐった。その後はお互い別れることになった。


「ありがとうございました!」


「気をつけてな」


私は別れた後すぐに宿へ向かって体を休めた。


「ふぁ〜 疲れた〜」


ベットにダイブして荷物を確認する。何か盗られていないかゆっくり確認しているとあるものが無くなっていることに気づいたが大して貴重なものでは無いし拾い忘れた可能性もあるものなので諦めた。


 騎士団に戻って今回の襲撃の状況や損害を書類にまとめていると突然扉を叩かれた。


「入っていいぞ」


入ってきたのは部下で手になにやら薔薇の花を持っている。そしてその花を私の机上に置いて話す


「グレン隊長、これはあの空間魔法の使い手の荷物にあったものです」


「お前それ!盗んだのか!?」


「はい盗みました。でもこの花、変ではありませんか?」


そう言われて花をよく見ると確かに様子が変だ。

外見は普通の薔薇の花であるが内在する魔力量がおかしい。普通のものより圧倒的に多い。


「確かにこれは変だな。偽物か?」


「いえ、何度も鑑定しましたが結果は本物と」


彼女の住む地域の特異種か?だとしたら世紀の大発見だが...


「これどうします?」


「研究部に渡しておけ。あいつら涙流しながら喜ぶぞ」


生憎私達はその類の専門家ではないので餅は餅屋、研究は学者にやってもらおう。


「そういう事なのでお前も今日はもう休め。今日は結構ハードだったろ」


「はい、わかりました。失礼します」


パタンと扉が閉まるとまた静寂が俺を取り囲む。

書類をまとめて団長に提出して俺は早めに帰って寝た。

先の事を考えると頭痛がしてくるのでな。明日の事は明日の俺に任せよう。

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