第4話
陸は抱きしめ返してくれたけど、すぐにわたしの肩を掴んで引き離した。
「とりあえず部屋に上げろよ。サチもびちょびちょじゃねーか」
見ると陸もずぶ濡れだった。長い間ここで待っていたのかもしれない。頭上に屋根があるとはいえ、この強風では雨が容赦なく降りこんでくる。
「えっと、タオル。タオル持ってくるね」
鍵を取り出しながら言った。
部屋に上げるのは何としても阻止したかった。あまりにも散らかっていて、見られたらきっと幻滅されてしまう。せっかく再会できたのに。
「何で。あ、俺のこと警戒してる?」
「そうじゃなくて、あの、すっごい散らかってるから……」
ドアの鍵を開けようとした時、腕を取って強い力で振り向かされた。冷たい手で顎を掴まれたかと思ったら、いきなりキスをされた。勢いが強すぎて後頭部をドアにぶつける。突然のことに固まっていると、ガチャッと鍵の開く音がした。いつの間にか鍵を奪われていた。
「散らかってるのくらい、どうってことねーよ」
口を離してそう言った陸は、一瞬知らない人に見えた。彼は、こんな強引なことをする人ではなかった。
「わたしの方がどうってことあるんだけど……」
反論を試みるわたしの腰を抱き寄せて、陸はドアを引き開けた。
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