第43話

「はい…」




秀吉は信長に謹慎を命じられてから、酒の酔が抜ける暇が無いぐらい昼間は酒宴に明け暮れ、夜は観月会など薪能を行い酒を呑んでいる。


人前では秀吉は猿楽師と一緒なって謳い踊って陽気に振舞っているのが分かる小一郎は三成に、



「心配いたすな。何とかするながわしの役目だ」



三成は自分の部屋に戻り着替えを済まし登城の合図である

卯の刻の太鼓の音を聞いた。



小一郎が動けぬ秀吉のため武井夕庵を味方につけ秀吉の謹慎を解く努力をした。



秀吉の謹慎が解けたのは信長が上杉謙信が手取川の線までしか進軍して来ないと判断し、松永弾正退治に本格的に力を入れるためだった。


すでに信長の嫡子の信忠を大将とし明智光秀、筒井順慶らが松永弾正が篭る信貴山城を攻撃していた。




秀吉は軍を率いて安土に赴き大和へ出陣した。


しかし、秀吉は三成に意外なことを命じた。



「佐吉、此度の戦さには出陣せずともよい」



「はぁ?」



驚き三成は聞き返してしまった。



「出陣せずともよい、のではなく先鋒に加わらずそなたの父の小荷駄隊に回るのじゃ。上杉謙信が手取川で勝ちながらも、南に進出しなかったのが分かるな?佐吉」



「はい」



戦場において兵糧を動かすことが重要なことは分かっていた。

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