第41話

羽柴家の家中の重臣達も口を閉ざしていた。



「とにかく、急ぎ安土に赴き帰陣に至った旨を上様(信長)に許しを乞うしかなかろう…」



「上様のあのご気性ですから、その場でお手討ちにあうかもしれませんよ」



半兵衛は悪戯っぽく笑った。



「半兵衛、脅かさんでくれ」



聞いている三成も笑える話ではなかった。 三成が考えてても十分その可能性があるからだ。



「殺されるならいっそ長浜で城篭りをするという手もあります。上杉、本願寺、毛利と結べば半年、一年はもちましょう」



三成は仰天した。


近くに座る尾藤知宣は大声を出した。



「半兵衛殿!! 何を…」



知宣は思わず口を挟んだ。


主君に謀叛を勧めなど普通のことではない。



ー確かに、今の秀吉さまは北近江の殿であり、十八万石の領国で五千の兵を持つているし、百姓に総動員すれば一万にはなるはずだ。半兵衛さまは普通に恐ろしいことを




「上様は大変お怒りになるでしょうが、織田家を思う殿のお気持ちが伝われば殺そうとはなさなるでしょう。ですが長浜城に殿が篭り鬱ぎこんでは謀叛を疑いになられるかもしれませぬ。殿は今後、今まで以上に陽気に振舞われる方がよいでしょう」




「……」





長浜城に帰る中、虎之介と市松は秀吉のいない所で悔しさを口にしていた。



「秀吉さまは臆病風に吹かれたのか…」



「よその陣の者に馬鹿にされた」



帰国した秀吉は急ぎ安土の信長の仮屋敷に行き、信長に拝謁を申し入れた。


しかし、話を聞いた信長の側近にその場で追い返され会ってもくれなかった。

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