第37話

「はい。大谷紀之介と申し、一つ年長で十八歳になっている男です」



「十八か、ここへ連れてこい」



三成は急ぎ馬を飛ばし紀之介を長浜城に連れて来た。


紀之介は驚いたが、秀吉の前に平伏し臆することもなく一礼し、




「大谷紀之介でござります」



秀吉は側に控えていた浅野長政に声を掛けた。



「腕のほどを見してみろ、弥兵衛、槍を貸してやってくれ」



長政から槍を受け取り紀之介は二度、三度軽く振った後、気合を入れ槍を突き出した。



「ほお、虎之介や市松、孫六らより上かもしれんな。 召し抱えよう」



三成と紀之介は顔を見合わせ、深々と頭を下げる。



「ありがたき幸せに存じます」



紀之介が召し抱えられたことで、紀之介の家族を思った寧々は母親と妹を侍女として奉公させた。





***




年が明け1577年になり、"越後の龍" と謳われ生きた軍神のように怖れらていた上杉謙信は一向門徒を毛嫌いしていたが、足利義昭の仲介により本願寺と和睦ができ、能登、加賀、越後の門徒が味方をするようになら織田勢は北陸の情勢が非常に不安定になっていた。




「修理(シュリ)殿(柴田勝家)の加勢にゆくことになった。加賀に出陣じゃ!!」

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