第34話

「はい、ありがとうございます。」



書院に佐吉と同じ年頃の少年が三人入ってくる。




「虎之介、市松、孫六じゃ仲良くせい。分かったな」




「はい」



四人同時に返事をした。


虎之介は身体が大きく愛想が良く、市松は丸顔で落ち着きが無く、孫六は無口だった。



長浜城下町は建設中でこの土地は長い間戦地だったため荒廃していて、田畑や灌漑用水路、街道の整備をしなければならない状態だった。


近習として秀吉の身の周りの仕事をしながら、杉原家次や秀吉の弟、小一郎らの元で農地の測量や調査を佐吉達は携わった。


商人、僧侶、農民の支援にも関わり、評価を受けたのは佐吉だった。



もちろん、槍術や剣術の稽古も怠らず励んでいた。


しばらくして、父と兄も秀吉に仕え、佐吉は秀吉に従い信長の仮屋敷に赴くことになり、名乗り名を石田佐吉三成とした。




「面を上げよ」



平伏している三成に甲高い声が響く。


初めて聞く信長の声だった。



ー女子のような声だ



三成は平伏したままだった。



「面を上げてよいと申しておる」



信長は早口で苛ついた声だ。


顔を上げてない三成に秀吉は慌てて三成の尻を叩き、小さい声で、



「これ、佐吉。頭を上げんか…信長さまに面を見せよ」



「しかし、秀吉さま…貴人から声掛けられたら三度は頭を下げ続けると…」




「信長さまは違うのじゃ、そんなことは一度でいいんじゃすぐ頭を上げろ」



秀吉は苛々したように促す。 仕方なく三成は顔を上げた。



「あっ!」

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