第33話

年が開け、佐吉は十七歳になった。


佐吉は今浜から長浜に名が変わった秀吉の城を訪ねていた。



番兵に追い返され途方にくれていると蹄の音が聞こえ、男の明るい声が聞こえてくる。




「おう、門を開けぬかわしじゃー」



陣羽織の小柄な男が表れ、佐吉の姿を見つけると大声で笑い叫ぶ。



「そなた、寺の小僧か?! 」



秀吉は近くまで来ると佐吉の肩を痛いほどの力で叩く。



「秀吉さま、俺を石田佐吉を家来にして下さい」



佐吉は平伏した。



「佐吉、ついて来い、そなたに引き合わせたい者がおる。遠慮はせず来い」




秀吉の側にいた長身の男は秀吉が上機嫌なのがわかった。


長浜城の書院には優しそうな女性がいた、秀吉は上座その女性の隣に座り、




「ほれ、そこに座れ佐吉」



佐吉は腰を落とした。




「寧々、以前話したじゃろう、わしの家来になりたいと言っておった寺の小僧が来たのじゃ、いろいろ教えてやってくれ佐吉じゃ」



「はい、おまえさま」



「佐吉、わしの女房の寧々じゃ」




「石田佐吉でござります。よろしお願い申し上げます」



佐吉が頭を下げると寧々は微笑みを浮かべて佐吉を見る。



「お城暮しには慣れてないこともあるでしょう、困ったことあれば、遠慮なく相談するがよいわ、佐吉殿」

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