第32話
「わかってる、夏耶が悪いわけではないのは……わかっていても許せない……」
夏耶の瞳からは大粒の涙がこぼれていたそれでも、もう抱きしめることも、苦しくて出来ない。
戦で田畑は荒れ、夏耶のような境遇の者はたくさんいるが今の佐吉では何も出来ないのだ。
夏耶と別れ、佐吉は屋敷に戻り真剣を振った。
汗が噴き出す、重辰は佐吉が真剣を振るのを静かに見守る。
「佐吉、何があったが知らぬが自分が今、何を一番するべきが分かっておるだろう、わしがそなたに教えてやれるものはもうないぞ」
「重辰殿、お聞きしてもよろしいですか?」
「なんじゃ?わしが教えられることなら…」
「重辰殿はお菊さんと奥方どちらを思っておられるのですか?教えて下さい」
重辰は笑う。
「佐吉も大人になったようじゃな…どちらも大事な女子じゃ、くらべられん。佐吉も妻を持てばわかるぞ」
「しばらくはいらないです…」
裏切られることが恐い。
***
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます