第30話
季節は秋になり、稲の穂が実りお辞儀をしている。
佐吉は治平の稲刈りを手伝い多喜屋敷に戻るとお菊が産気づいていた。
子供は無事産まれ、彩はお菊の変わりに赤ん坊をあやしていた。
お菊は重辰の妾だが、仲が良く腹違いの弟を良く可愛がっている。
彩は正澄との正式に婚約することになり、このところ機嫌も良い。
やがて、木枯らしが立ち始める。
佐吉は薬問屋へ使いに出ていた。
久しぶりに夏耶に会えると思うと心が弾んでいた。
お店に着き、中に入る。
ー広い庭だな
屋敷の一室が佐吉からは見えた。
元からそこは障子が開けてあり、男の人影あるのがわかる。
問屋の主人の男の身体に隠れるように緋色の小さな姿が見えた。
ー女といるのか…
大柄な男の影にちらりと見えた緋色のものを纏った細い影に敷かれた褥に、なにをしていたかわかる。
佐吉は見てはいけないと思い、ずっと視線を下に落としていた。
微かに喘ぐ女の声が聞こえ、何故か聞こえる声は聞き覚えがあるような気がする。
昼過ぎまで、又蔵の腕が絡み付いていた。
又蔵が胡座かいている上に夏耶は緋色の襦袢を乱して跨り喘いでいた。
「あん…旦那さぁま…もう…お許しください…はぁん…」
激しく揺らされ襦袢が落ちた。
褥に押し付けられ、胸元で又蔵の頭が蠢く。
「まだまだじゃ、そなたの肌は良いのぉ…」
ふと、夏耶は顔をめぐらせた。
部屋からはお店に客が来たのか人影が見えた。
……!!
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