第19話

治平は女房がいるがよく違う女を連れて歩いているのを見たことが佐吉はあった。



佐吉が返事をしないので治平は真剣な顔になり、



「佐吉、お前…女子の経験がないのか?」



何も言わないでいると治平はからかうのをやめて、女子は男とは違い優しくしなければならないと話し出した。




***



久しぶりに夏耶に会うと数日前の治平の話が頭に残っていて緊張する。



「佐吉さま…どうして会いに来てくれなかったの」



夏耶は少し怒っているのか、いつものように笑ってくれない。



「すまぬ、堀割の工事を手伝っていたから」



「堀?」



佐吉は堀割の話しを彼女にした。


川沿いの土堤に二人で座り笑い合った。


近くの小屋に誘われるまま入り躯を寄せ会っていると、おかしな気持ちになる。




見つめ合うとどちらともなく自然と唇を重ねると、夏耶が体重を掛けてくるのを佐吉は受けとめ、仰向けになった。




「佐吉さま、私をどう思っているの…聞かせて……」



吐息がかかりそうなほど近い夏耶に躯が勝手に熱くなる、唇を半ば開いて佐吉を見下ろしていた。



鼓動が激しくなり苦しい。




「好きだ夏耶が」



溜息を漏らして夏耶は佐吉の胸の上に倒れ込んできた。

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