第17話

夏耶が笑ってくれるのが嬉しかった。




ー夏耶が好きだと思う





屋敷に戻ると重辰やお菊、兄がいて充実した毎日を送っていた。



桜の花が散り、季節は初夏が訪れようとしていた。


佐吉は朝から書物に目を通していたが、声がかかる。



「佐吉、工事の手伝いに正澄と行ってほしいだが」



「はい」



水はその土地を潤すためには必要な自然だ。 なにより田畑を育て、大きな実りをもたらし水は川を流れ舟を運び、戦になればその堀は軍勢を防いでくれる。



堀割の作業を手伝うことが出来るのは楽しい、指揮を取る治平は仲良くなると工事の図面を見せてくれた。



夏耶のことも忘れ工事にのめり込み会いに行ってなかった。




「治平殿、ここをもう少し拡げた方がよいではないですか」



「そうか?佐吉は色んな事を考えるな」



お昼を過ぎた頃、重辰の娘の彩が風呂敷に握り飯を入れ工事場まで来た。



「正澄殿!!」



「佐吉の姉さん良く来るな」




「…何度も言いますが、彩殿は姉上ではありません。師の娘です」

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