第16話

佐吉に好かれていると自信があるのに、彼は好きだとも、躯を求めてこない。



川沿いの土堤に二人で座ると夏耶がよりかかってくる、



「佐吉さま…」



驚いて離れようとすると夏耶の細い腕が項に回り、唇を押しつけてきた。




「なっ!?…」




よけることも出来ないままその口づけをなすがままに受けいれていた。


夏耶の柔らかい唇が離れる。



「嫌?私と…」



夏耶は消えそうな声で呟いていて、泣き出しそうな顔に見えた。




「嫌なわけでは…」



初めての口づけに佐吉は戸惑う、とても柔らかく甘かった夏耶の唇。



「嫌じゃないなら、佐吉さまからして…」



ぎこちなく夏耶の肩を掴みそっと口づけると、夏耶のほうから舌を絡ませ声を漏らしていた。



「んっん…」




慣れない仕草で夏耶を抱き寄せ、ただひたすら唇を重ねるのに夢中だった。




人通りが少ないとはいえこのままではいけないと思い、唇を離すと夏耶は顔を染めていた。



毎日の稽古も畑仕事も佐吉は励み時間があると夏耶に会いに行っていた。

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