第11話

店から中年の男が出てくると、夏耶の肩を掴み店の中に促している。


男は佐吉を一度睨み、何ごともなかったように店に入って行った。



佐吉が多喜屋敷に戻ると兄の正澄が玄関で待っていた。



「佐吉、遅かったな伯母上が心配していたぞ」



「兄上」



佐吉は夕餉を済ませその日は眠りについた。



多喜屋敷での朝は早く、庭掃除、拭き掃除、武経七書(ブキョウシチショ)などの兵法書を目を通し、稽古が始まる。



「よいか、戦場で役に立つのは刀ではなく槍だ二人とも、刀では鎧は斬れぬ、槍は鎧の隙を突いて深傷を負わすことも、薙ぎ斬ったり、突き倒すことができ間合いが長くとれる利点がある。本日からは槍の稽古だ」



「はい」



「では構えてみろ」



佐吉は槍の柄を握り構える。



「駄目だ。そんな構えで槍を繰り出せるか!腰を落とさぬか、このようにだ佐吉」



重辰は二人に手本を見せる。



「突いてみろ」



佐吉と正澄は槍を突き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る