第6話

「佐吉が羽柴の殿さまにお茶をお出しなされ、お供の方々には小坊に」




佐吉は茶をお盆に乗せ、住待に従い後について行く。



「粗茶でございます」



「おう、忝いのう」



秀吉は茶碗を取ると一気に飲み干した。


秀吉が一息ついた時、佐吉は勇気を出した。



「羽柴さま」



住待は慌てて、



「これ、控えなさい」



秀吉はじろりと佐吉を見た。


その目は鋭く、大人の余裕があり緩んだ表情とは違う。



「お願いいたします。」



「この者は?」



秀吉は住待に問いかける。



「隣り村の石田村の石田殿の倅でございまして、名は佐吉と申しまして古くからの中で、学問をつけさせるため預かっておるのでございます。ご無礼はなにとぞお許し下され」




「そうか、まだ童じゃな」



秀吉は目を細めて佐吉を見ると笑った。



「いいえ。すでに十五になりました」



「生意気な口を叩きおるわ」



秀吉は呟いた。



「わしになにか言いたいことがあるのか」



「はい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る