第4話

二人の視線が築城中の城へ向けられた。


佐吉は憧れるように城を見ている、そのようすに紀之介は、





「羽柴さまか。才覚のあるお方で、織田さまの家中の中で異例の大出世なされたな、俺もなれるものなら…」




「ツテがない…」




「そうだな…高望みかもしれないな」



顔を紀之介と見合わせ苦笑いを浮かべた。



陽が傾きかけ山地の稜線にかかろうとしている。



「縁があればまた会おう、紀之介」



「ああ、佐吉またな」



茜色に染まった中、紀之介は大谷村へ、佐吉は観音寺へ向け歩いて行く。





***





秋に入り、観音寺は静寂に包まれ、筈かに読経な声が響いているだけだ。


突然その静寂が破られたのは、山門前に馬を繋いだ小柄な男が数人の供を従えて境内に入って来たのだ。



佐吉は与えられている庫裏くりの一室の窓からその様子を見た。



本堂の前でひらりと馬上から降りる。



「誰かおらぬのか?わしじゃ、わしじゃ!!」

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