第15話

「あいつ、親が事故で死んだらしくてさ」

 何の前置きもなく、吉木が本題に入った。

「え、死んだって……え?」

 悪い冗談かと思った。

「違う高校行ったから俺も詳しいことは知んねーけどさ、父親も母親もいっぺんにって」

 吉木にしては珍しく深刻な口ぶりに、信じたくないのにジワジワと現実味が増していって、鳥肌が立つのを感じる。

「あいつ、兄弟多いんだろ?そいつらのこと養わなきゃなんねーつって、高校辞めて働いてんだと」

 私はいよいよ言葉を失った。

 昨日、叶多は一言もそんなことを言わなかった。あの優しいお父さんと、愛情に溢れたお母さんがもういないなんて、匂わせることすらしなかった。ただ、私ともう関わりたくないみたいに、すっかりよそよそしかった。

 私がメールを返さなかったから嫌われてしまったのか、あるいは私の父親のことを知って引かれたのかと思っていたけど。

「それって、いつ頃のこと?」

「いつだろ……高一の秋とか冬とかそんぐらいじゃね」

 叶多からの最後のメールの時期とも一致する。むくむくと、焦燥にも似た罪悪感が湧き起こった。

「それじゃあ、カナタくんは今も働いてるの?」

「じゃね?詳しいことは知んねーけどよ」

「でも、昨日の夕方カナタくんに会ったけど、全然、仕事帰りって感じじゃなかったけどな……」

 叶多のラフな格好と、幸多を連れていたことを思い出してそう呟く。

「会ったのかよ」

 吉木は露骨に面倒くさそうな顔をした。

「休みだったんじゃね?知らねーけど」

 そう適当に片付けて、また私の肩を組んできた。

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