第7話
私は別に、大学に行きたかったわけではなかった。進学することを選んだのは、お母さんやおばあちゃんが私にそれを望んだのと、もう一つ。ここを逃したらもう二度と、この人と暮らすことはないだろうと思ったからだ。
私はただ、知りたかった。
お母さんの葬儀に現れた父親は、おばあちゃんに中に入れてもらえなくて、外で声を上げて泣いていた。お母さんの名前を何度も何度も呼んで、愛してた、愛してたんだ、と叫び続けた。
その時私は、おばあちゃんの腕の中で、笑い出しそうになるのを必死に堪えていた。いい気味だと思ったわけではなく、なじりたかったのでもなく、憤りとも憐憫とも悲しみとも違う、ざわざわとした感情が、ともすれば喉を突き上げて、笑い声に変わりそうだった。それ以来、私はうまく笑うことができなくなった。
父親と過ごしたら分かるかもしれないと思った。あの時の感情の正体も、父親が本当にお母さんを愛していたのかも、お母さんがなぜボロボロになるまで父親を見限らなかったのかも。
それは自分にとって、とても重要なことのように思えた。
だから私は、おばあちゃんの反対を振り切って、父親のもとに戻ることに決めた。家の近くの大学を選び、父親と、そして自分の感情と向き合うことに決めた。はずだった。
叶多と再会して一夜が明けた今は、全てがどうでも良いような気分だった。自分が無意識のうちに彼をかなり当てにしていたことに、今頃になって気づかされている。
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