第4話

「今のコウタくんだよね?大きくなったね」

 感慨深さで胸がいっぱいになった。

 そんな私に、叶多は「まあね」とそっけなく肯定した。

「そっか、コウタくんのお守りで来たんだ。相変わらず良いお兄ちゃんだね」

 本心から言ったのだけど、叶多は「そうかな」と首を傾げた。

「あ、もしかしてまた兄弟増えた?」

 叶多のお母さんが赤ちゃんにかかりっきりなのかと思ったのだ。

 でも、彼はそれを否定した。

 そして、それっきり心を閉ざしてしまったのが分かった。

「じゃあ、俺そろそろ行くね」

 一刻も早くこの場を離れたいみたいに、身体はもう斜め横を向いている。そんな相手を引き留めるような執着心を、私はとうの昔に失くしていた。

「うん、じゃあ」

 小さく手を振ると、叶多も軽く手を挙げた。

「元気でね、ユメちゃん」

 彼はそう言って微笑んだ。

 私に背を向けて、振り返ることなく、弟が走っていった方へ大股で歩いていった。

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