第6話
「来ないかと思ってたよ」
下半身の熱を鎮めることに全神経を注ぎながら、女を家に上げた。
注射セットが入った鞄を寝室に取りに行った俺は、女がリビングで固まっているのを見て、エロ動画を映しっぱなしなのに気づいた。
「ごめんごめん、こんなことさせる気ないから心配すんな」
そう宥めながら、女優の雰囲気がこの女に少し似ているという理由で選んだ動画を消した。
「わ、私、帰ります。すみません、あの、邪魔しちゃいましたよね」
遠慮がちに俺の股間のあたりを何となく指してくる。だいぶ目立たなくなっていると思うけど、バレちまったか。
「そういう知識はあるのか。一応確認しとくが、未成年じゃないよな?」
動揺させたくてそう訊いたけど、女の目がぐるぐるしているのを見て、すぐに反省した。
「落ち着け。注射するだけなんだから答えなくていい。あんたが何歳だろうが今日は手ぇ出さねえよ」
「わ、私……」
ジリジリと後ずさっていくのを、帰る気かと思いながら見ていると、女はキッチンに置きっぱなしにしていた飲みかけの缶ビールを手に取った。
「あ、おい」
止める間も無く、女はそれをゴクゴクと飲み干してしまった。
「先月、ハタチになりました」
目が完全に座っている。
キャパオーバーを起こして壊れたか。面白いけど心配になるな。
「おいおい、酒入ってるやつには打てねーぞ」
「何をですか?」
「ワクチンに決まってるだろ。何しに来たんだ」
「何って、先生にお礼を言いに……」
呂律が怪しくなったかと思ったら、女はいきなり崩れ落ちるように倒れこんだ。
「すげえ熱じゃねえかよ」
彼女を抱きとめて、その熱さに驚く。
自分の下半身に気を取られて女の顔をまともに見ていなかったけど、確かに顔が赤いし、呼吸も荒い。
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