免疫反応
第3話
「院長のお孫さん、緊急ということで先にお通しします」
外来の診察の合間に看護師から告げられて、俺はにわかに緊張した。
出現頻度は低いものの、ワクチンの副反応にはエグいものがある。
「失礼します!」
勢いよく診察室の戸が開いて、子供を抱いた女が飛びこんできた。
子供の顔色は問題なさそうだ。意識レベルも正常に見える。
「どうした?」
聴診器を耳につけながら尋ねた。
どちらかというと女の方が体調が悪そうだ。顔面が蒼白で、苦しそうに息をついている。
「あ、愛香さんの、腕が、腫れて……」
女は息の合間にそう言って、袖をまくって子供の腕を見せてきた。
「腫れてるな」
「はい」
「え?それだけか?痙攣したとか」
「あ、少し痒みもあるようで。腫れてるところ触ると熱くて……」
拍子抜けした。この女、予防接種を受けたことがないのか。
「手遅れになったらどうしようって心配で、それで連れてきたんですけど」
至って真剣なようだ。
俺は、接種後の注意事項が書かれた紙を差し出した。
「ワクチン打ったんだから、そりゃちょっとは腫れる。順番を割りこんでまで俺に見せにくるようなことじゃない」
どんな反応をするか見たくて、わざと意地悪な言い方をした。
女はその紙を食い入るように見ると、顔を上げて俺を睨みつけてきた。
「こんなの頂いてませんし、説明も受けてないです」
そう正論をぶつけてくる。
ああ、こういう勝ち気な女、すげえ好き。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます