第32話
あれから咲来と眞野との間には何もない。好きになる前に戻ったように、必要に応じて指導を受けるし、そうでなければ喋らない。
研究室の先輩や同期は、そんな二人のことを最初のうちは好奇の目で見ていたけど、修論や卒論に追われたり、学部の三年生が新しく入ってきたりで、今ではもう表立って気にする人はいなくなった。
咲来は後藤に、何をしたのかと訊いてみたことがある。
『ちゃんと卒業して、東西ファーマに就職したい』という咲来の望みに、後藤は『それなら力になれるかもしれない』と言って、実際、二週間ぶりに研究室に復帰した咲来は、何不自由なく研究室生活を送れている。噂が広まって内定を取り消されたりもしていない。
後藤は、『大したことはしてませんよ』とはぐらかして、教えてくれなかった。
その後、咲来がラボの先輩から漏れ聞いたところによると、後藤の指導教官である久保教授が、咲来のところの教授に圧力をかけたとかで、そこに後藤が何らかの関与をしたのではないかと咲来は思っている。
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